超高齢社会である日本の要介護認定者数は急速に増加し、介護職は需要が高まる一方です。
しかし、介護職の経験がない人にとっては、介護職は専門性が高いイメージがあり、挑戦しづらい職業となっているかもしれません。
介護の仕事に興味はあるが資格なしでも大丈夫なのか、資格の有無によってどんな差があるのか、などの疑問を持つ人も少なくないでしょう。
結論から言うと、資格なしでも介護現場で働くことは可能です。しかし、有資格者と無資格者では色々な違いがあります。
今回は介護の仕事とはどのような仕事で、有資格者と無資格者ではどのような違いがあるかを解説します。
介護の仕事とは
まず、介護の仕事は心身に障害を持つ人や高齢者などに対して生活するために必要なサポートをすることです。
介護の仕事は大きく分けて「身体介護」と「生活援助」の2つがあります。
身体介護
身体介護は、対象者の体に直接関わってケアやサポートを行うことです。
主な身体介助を説明します。
①起床・就寝介助
起床・就寝介助とは、利用者さんの起床や就寝の行動をサポートすることです。起床・就寝時間の管理をして生活リズムを整えたり、洗顔介助や寝具の準備・調整などを行い、利用者さんが休息・活動できるように援助します。
②移乗介助
移乗介助とは、利用者さんの動作に対するサポートを行うことです。例えば、車椅子からトイレやベッドに移動する際に、利用者さんの状態に合わせて体を支えて負担を軽減させたり、安全を確保したりします。
③保清介助
保清介助とは、対象者の清潔を保つために入浴または体拭き・洗髪のサポートをすることです。また、皮膚に異常が無いかなどの観察も行います。
④排泄介助
排泄介助とは、対象者の排泄の時の動作をサポートしたり、オムツを交換したりすることです。
⑤食事介助
食事介助では、食事を食べる際の動作をサポートします。実際に食事を口に運んだり、食べやすいように工夫をしたりします。
⑥体位変換
体位変換とは、体の向きを変えるサポートを行うことです。長時間同じ向きでいることにより発生する床ずれや身体障害を予防、または治療する目的で定期的に体位変換を行います。
⑦衣服着脱
衣服着脱の介助は、衣服の着脱の動作をサポートします。また、季節や気温に合った衣類の選択や調整なども行います。
生活援助
生活援助は、対象者に日常の家事のサポートを行うことです。身体介護のように対象者の体に直接関わって行うことはありません。
生活援助の例は以下の通りです。
- 調理
- 配膳
- 洗濯
- 掃除
- ベッドメイク
- 衣類の整理
- 利用者さんとのコミュニケーション など
介護士が資格なしでできる仕事
介護士が資格なしでできる仕事は、主に生活援助です。介護施設によっては身体介護も行えますが、実際は有資格者の補助に回ることが多いでしょう。
有資格者と無資格者の給料の違い
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると有資格者と無資格者の平均給与額は以下の通りです。
- 有資格者(平均勤続年数8.9年) 319,460円
- 無資格者(平均勤続年数5.2年) 271,000円
有資格者と無資格者の給料の差は48,460円です。比較対象の平均勤続年数に違いはあるものの、5〜9年目までは給料の差はそれほどないため、おおよそ40,000円前後の差があるとみてよいでしょう。
介護士が資格なしで働くデメリット
介護士が資格なしで働くデメリットは以下のことが挙げられます。
- 正社員雇用の求人募集が少ない
- 可能な介護業務が限られている・やりがいを感じにくい場合がある
- 給料が低い
無資格でも働くことはできますが、以上のようなデメリットがあるため、資格を取得することが望ましいでしょう。 資格のない介護士が最初に取得した方がいい資格としては、初任者研修が挙げられます。
初任者研修とは
初任者研修とは、介護職の基礎となる知識や技術を修得する研修であり、従来のホームヘルパー2級から改訂された資格です。
講義と実技演習のカリキュラムを130時間受け、筆記修了試験に合格することで資格を取得できます。
資格取得はハードルが高いと思われがちですが、初任者研修ならかかる期間は最短で3週間、費用もスクールによっては3万円台で受けられるところがあります。
また、現在定職に就いていない人であれば、ハローワークに求職登録すれば無料で受けられる制度もあるので利用すると良いでしょう。
初任者研修保有者と無資格者との違い
初任者研修を取得した人は無資格者と比べ、具体的にどのような違いがあるのか説明します。
求人募集
介護職員の求人には、初任者研修以上を保有していることを条件としている施設が多くあります。そのため、就職先の幅も広がります。
仕事内容
無資格者は行える仕事内容に制限があるのに対し、初任者研修以上の資格保有者は制限があまりないため、仕事の幅が広がります。
例えば、無資格では行えなかった訪問介護ができるようになります。
給料
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると初任者研修保有者の平均給料は300,510円(平均勤続年数8.1年)です。無資格者との差は29,510円です。
資格なしで介護士として働くことはできるが、資格取得を目指そう!
日本では介護職の需要が高まる中、人材確保に向けた処遇条件の改善や、働きながら資格取得できる環境整備・資格取得方法の改訂などが行われてきています。
しかし、それと同時に専門職としての資質の向上も求められています。そのため、全体的な労働条件は改善されても、有資格者と無資格者との仕事内容や処遇条件の差は今後も埋まることはないでしょう。
介護職で長く働き続ける中で、専門的知識や技術を身に付けることは必然であり、遅かれ早かれ資格取得を目指すことになります。
また、介護の仕事を長く続けるには、やりがいを得ることがとても重要です。やりがいは、利用者さんからの感謝や自分自身の成長・専門職としての自信などから感じることが多くあります。
利用者さんからの信頼や自分自身の成長・専門職としての自信を上昇させるには、介護の知識や技術を身に付けることやスキルアップを目指すことが必要です。
つまりは、無資格でも働くことは可能ですが、介護職に就いてやりがいを感じながら長く働き続けるためには、初任者研修などの資格を早い段階から取得しておくことが望ましいでしょう。