認知症カフェはオランダから始まったアルツハイマーカフェをベースに、認知症の人やその家族、医療介護従事者や地域に住む人などが気軽に参加できる団らんの場です。
情報交換や認知症など専門的な相談が可能であるだけでなく、地域の人たちとの結びつき強化も大きな目的の1つとして各地で開催されています。
本記事では、現在全国に飛躍的な広がりを見せる認知症カフェの役割や種類、カフェの見つけ方についてわかりやすく説明していきます。
認知症カフェとは?
認知症カフェは、認知症の人やその家族などの関係者以外にも、地域の住人なら誰もが自由に参加できる空間です。
現在専門家の間では、初期認知症の人と家族への地域ぐるみの支援に注目が集まっており、その施策の一端として認知症カフェが短い期間で全国に浸透していきました。
2020年末時点で7700カ所以上の存在がわかっていますが、把握しきれていないカフェを合わせると、実際の数はもっと多いと推察されています。
そのため認知症カフェは、あらゆる立場の運営者がさまざまな目的を持って開催しており「認知症カフェってこんなところ」と一言では表現できない状況に陥っているといえます。
さらに急速な増加も手伝って、認知症カフェが期待通りに地域に根付かない可能性が今後の課題といえるでしょう。
空白の期間を認知症と向き合う期間に変える役割を持つ認知症カフェ
認知症カフェの目的は次の2つが挙げられます。
- 認知症の人と家族の社会的な孤立を防ぎ、精神的負担を和らげる
- 適切なサポート機関へ速やかに連携して、地域での安定した生活を守る
上記2つの目的を持った認知症カフェについて詳しく紹介します。
認知症の早期診断後や、診断前の「認知症じゃないか」と違和感がある期間は、適切な支援を受けられず認知症とどう向き合えばよいか分からないことがあります。適切な支援を受けるまでの期間を「空白の期間」といい、支援を受けられない空白の期間が深刻な課題です。
この課題には、症状だけを見て認知症の人の訴えを汲み取ろうとしない、偏見のある社会的認識が深く関わっているといえるでしょう。
認知症に対する対応改善の施策として、2012年に発表された「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を皮切りに、誰もが安心して暮らせる地域づくりの役割を持って認知症カフェが誕生しました。
認知症カフェは、上記で説明した空白の期間を認知症と向き合う期間に変える役割を持っています。
そして、認知症は見た目ですぐ気づく症状ではないため、、本人や家族が周囲に悩みを打ち明けられずに孤立するケースが多いです。
認知症カフェは、認知症の人が当たり前に受け入れられる地域づくりに貢献すると同時に、地域の人が認知症を身近に感じて理解する機会を提供する役割も果たしています。
認知症カフェの運営者はさまざまで種類が多い
認知症カフェは月に1〜2回、1回2時間程度の開催です。
カフェは、基本的に以下の団体や個人が運営者として催しています。
- 市区町村
- 社会福祉法人
- NPO法人
- 家族会
- 社会福祉法人
開催場所は運営者によってさまざまで、複数のカフェが点在する地域も多くあるため、自分が「ほっとできる」などのポイントでカフェを探してみるとよいでしょう。
ここからは認知症カフェの種類を紹介します。
家族会系カフェは認知症の人やその家族のこころのケアが中心
家族会系の認知症カフェでは、主催者が認知症の人やその家族などであるため、一般住宅の一角などを利用するケースが多いです。
地域にもよりますが、参加者はおおむね20名前後で月に1回開かれます。
また、同じ葛藤を抱えている本人や体験者同士で相談・共感・解決するなど、交流しやすい特長を持っています。
家族会系の認知症カフェの開催目的は、認知症の人の社会的な関わりの維持と本人や家族のこころのケアが中心です。
スタッフには家族会メンバーをはじめ、ボランティアや認知症サポーター、医療・介護従事者などが担当します。
楽しむことに特化した社会福祉法人の施設内で行われる認知症カフェ
認知症の人や高齢者が暮らす養護老人ホームや介護療養型医療施設などで行う認知症カフェは、週1回程度、施設内の1室を利用して開かれます。
参加者は10名から20名、費用は100円程度です。
認知症の人や家族への心のケアはもちろんのこと、同じ悩みを抱えた人同士が交流して支え合うカウンセリングの場としての役目も持っています。
施設の職員と一緒にゲームや料理などのアクティビティを行うのが主流で、認知症の人が楽しく過ごすことを最大の目的としています。
地域住民も気軽に参加できる非営利団体が運営する認知症カフェ
非営利団体が運営する認知症カフェは、だれでも気兼ねなく参加しやすい憩いの場です。
近隣に住むお年寄りが思い思いに集まって、好みに合う余暇活動や歓談の場として個人宅や店舗が協力して催しています。
参加費は定額制ではなく、自分が購入した分だけ飲食代として支払う方式です。
NPO法人の職員とボランティアが主なスタッフとして加わり、1人暮らしの高齢者の参加率が高く、1度の開催で10名から20名程度が利用する特長があります。
お財布にやさしい市区町村が開催する認知症カフェ
市区町村が運営する認知症カフェは、特に認知症の段階が進行していない人を対象とした場で、認知症のサポートや制度に関わる情報提供を目的としています。
市町村の施設を利用して開かれ、参加費がかからず参加にあたって金銭的な負担を要しません。
医療・介護の専門スタッフと10名から20名の参加者とともに、お茶会や簡単なエクササイズ、脳トレーニングのレクリエーションなどを行います。
専門職による認知症の勉強会や介護に関わる専門的な相談も
認知症カフェで取り組む活動は、団体ごとに多種多様です。
がんらい楽しみながら自然体で過ごす主旨を持ちスタートした場であるため、アクティビティや活動に縛りを設けず、参加者が主体的に楽しめるよう工夫して運営しています。
運営者の中には認知症の専門的な知識を持つスタッフが多いため、参加者は認知症や介護について臆することなく相談をしたり、勉強会や講話で認知症への理解を深められます。
認知症カフェの見つけ方とポイント
認知症カフェが日本で普及して10年以上たった現在、極端に人口が少ない地域を除いてほとんどの市町村で多く開催されています。
多くの認知症カフェではホームページを作成し活動をアピールしているため、インターネットで探すのは効率的な方法です。インターネットで「認知症カフェ(お住まいの地域名)」と検索すると見つかります。
他にも、高齢者の暮らしを地域でサポートする地域包括センターや市区町村に問い合わせてみるのも有効な方法といえるでしょう。
以下では認知症カフェに参加する時のポイントを紹介します。
参加する楽しみを感じる場所なら近くでなくてもOK
認知症カフェは、住まいと違う市区町村でも自由に参加可能です。
自宅の近所や通う施設内に認知症カフェが設置されていれば、最初は通いやすいという理由から参加してみる人も少なくないでしょう。しかし、近くの認知症カフェに参加しても、楽しくないことや次も利用したいと思えないかもしれません。
そういった時には、少し足を伸ばし、住まいとは違う市区町村の認知症カフェに通ってもよいです。
本人に参加意欲が見られない場合は知り合いを誘うのもおすすめ
良さそうな認知症カフェを見つけても、認知症である本人が参加したい気持ちにならない場合もあるでしょう。
本人が参加したい気持ちにならないときは、気心が知れているヘルパーさんや同じ境遇の友人、仲が良い知人などに同行をお願いしてみるのもいいかも知れません。
居心地の良い認知症カフェの特徴の1つとして、元々の知り合いを誘って参加する利用者が多い傾向が挙げられます。
認知症カフェで地域で助け合う介護を実現しよう
認知症カフェは、認知症の人やその家族だけでなく、認知症について誤った認識や偏見を持つ人にとっても正しい関わりと理解を学べる大変有効な場といえます。
特に心の消耗が多くなりがちな家族介護者にとって、社会や地域とのつながりを持てる認知症カフェで一息つきながら情報交換や介護相談できるメリットは大きいでしょう。
同じ境遇の仲間と苦しみや悲しみを話し合える経験は、心を軽くして生活にハリを与えてくれます。
記事を読んで認知症カフェに興味を持った人は、ぜひ一度地域で開催されている認知症カフェに参加してみてください。
高齢化が進む現代に、人と人が支え合う地域づくりに貢献していきましょう。