日本では認知症の方が増え続けており、介護者は認知症に対する正しい知識やスキルを持つことが求められてます。
そこで、2021年4月からの介護報酬改定に伴い「認知症介護基礎研修」の受講が無資格の介護職に対して義務化されました。
「認知症介護基礎研修」という言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、どのような研修かご存知でしょうか。
今回は、認知症介護基礎研修の研修内容や受講方法について詳しく解説します。
認知症介護基礎研修とは
認知症介護基礎研修とは、すべての介護者が認知症介護技術の知識を持ち、適切なケアを提供できるスキルの修得を目的として実施されている研修です。
受講対象者は、介護サービスに関わる無資格の職員が対象です。
認知症介護基礎研修の内容のカリキュラムは大きく2つに分けられます。
- 認知症の人の理解と対応の基本
- 認知症ケアの実践上の留意点
それぞれのカリキュラムについて詳しくみていきましょう。
認知症の人の理解と対応の基本
「認知症の人の理解と対応の基本」は講義式の研修です。
講義を受講した後に、講義内容に関する確認テストや参加者の意見交換が実施されます。
「認知症の人の理解と対応の基本」は、ただ定義や症状、理論を学ぶだけではなく、具体的な認知症の状態や対応方法、生活や心理面への影響などを理解できるように講義が進められます。
学習内容は以下の通りです。
- 認知症の人を取り巻く現状
- 認知症の人を理解するために必要な基礎的知識
- 具体的なケアをする時の判断基準となる考え方
- 認知症ケアの基礎的技術に 関する知識
認知症ケアの実践上の留意点
「認知症ケアの実践上の留意点」は演習式の研修です。
介護の現場で認知症ケアを実践するための具体的な方法について、事例演習を通して学んでいきます。
全体を通してグループワークを中心とした研修なので、参加者同士で意見交換をおこない、理解を深めることができます。
また、研修講師からのフィードバックやアドバイスも受けられるため、より実践的なスキルを身につけることができます。
学習内容は以下の通りです。
- 認知症の人との基本的なコ ミュニケーションの方法
- 不適切なケアの理解と回避 方法
- 病態・症状等を理解したケア の選択
- 行動・心理症状(BPSD) を理解したケアの選択と工夫
- 自事業所の状況や自身のこ れまでのケアの振り返り
受講方法
受講方法は、自治体によって異なります。
お住まいの自治体での実施状況や受講料の確認が必要です。
都道府県のホームページや社会福祉協議会などのサイトで詳細を確認することができます。
現在は新型コロナウイルスの影響もあり、講義形式の部分はオンラインのeラーニング形式に変更されている場合もあります。
認知症介護基礎研修のeラーニングを実施している団体は大きく二つです。
- 「仙台センター」が実施団体の自治体
- 他の団体が実施団体の自治体
受講を申し込む場合には、実施団体により手続きが変わりますのでご注意ください。
認知症介護基礎研修の義務化
2021年4月から、介護報酬改定に伴い「認知症介護基礎研修」の受講が無資格の介護職に対して義務化されました。
2023年までは経過措置期間となっており、2024年4月からは完全に受講が義務化されます。
お住まいの自治体での開催状況を確認し、受講時期を決めていきましょう。
受講免除者の条件
受講対象者は「介護保険施設・事業者等が当該事業を行う事業所に従事する介護職員等」とされています。
受講義務化の対象外はおもに、医療・福祉関係の資格を持っている方です。
以下に、受講を免除される資格をまとめました。
- 医師、歯科医師、薬剤師
- 看護師、准看護師
- 介護福祉士、訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、介護職員初任者研修修了者、実務者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
- 管理栄養士、栄養士
- 社会福祉士、介護支援専門員、精神保健福祉士
資格を持っている方以外にも、認知症介護実践者研修などを修了済みの方や、福祉系高校で認知症に関わる科目を受講している方も義務化の対象外です。
認知症介護基礎研修と介護職員初任者研修の違いは?
介護職員のための研修には「介護職員初任者研修」があります。
介護職員初任者研修を修了すると、介護の最低限の知識や技術、考え方のプロセスが身につき、基本的な介護業務がおこなえるようになります。
また、利用者さんの体に直接触れる「身体介護」が可能になるため、業務の幅が広がります。
介護の仕事は無資格でもできますが、介護職員初任者研修は介護職員のキャリアアップのための最初の研修だといえます。
また、受講は最短でも1ヵ月と長い期間が必要です。
一方で、認知症介護基礎研修は、認知症の介護技術や知識に特化した研修です。
受講期間も1日で修了できるので、取り組みやすい研修でしょう。
無資格の介護職に「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されたので、まずは「認知症介護基礎研修」を修了し、いずれはキャリアアップのために「介護職員初任者研修」に挑戦してみるのをおすすめします。
認知症介護基礎研修の修了後のキャリアパス
認知症介護基礎研修は「認知症介護実践者等養成事業」に位置づけられた介護初任者向けの基礎的な研修です。
研修を修了すると、介護の現場で認知症高齢者に対する適切な介護ができる基礎知識や技術が身に付きます。
さらに、専門性を高めるためには、より高度な研修が必要です。
「認知症介護実践者等養成事業」にはスキルアップのために認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者養成研修といった研修が設けられています。
これらの研修を修了することで、より高度な介護技術を身につけ、認知症高齢者に対する適切なケアが提供できるようになります。
認知症介護基礎研修を受講して適切な認知症ケアを
認知症介護基礎研修は、介護現場で働く介護者が認知症の方に対して適切なケアを提供するための基礎知識やスキルを学ぶための研修です。
各自治体によって受講システムが異なり、現在は新型コロナウイルスの影響もあり、一部の自治体ではeラーニング形式の研修がおこなわれています。
研修の修了後は、より専門的な研修を受講することができるのでキャリアアップも目指せます。
まずは、認知症介護基礎研修を修了し、適切なケアの提供を目指しましょう。