介護士をしている人の中には、腰痛ベルトをして仕事をしているという人も多いでしょう。
介護施設によっては、腰痛予防として腰痛ベルトを支給している事業所があります。
この記事では、なぜ介護士にとって腰痛ベルトが必須なのか、理由と腰痛ベルトの種類、おすすめの購入方法についてお伝えしていきます。
何故腰痛ベルトは介護士にとって必須なのか
腰痛について説明する前に、背骨の仕組みと働きについて解説します。
背骨は、腰椎という5つの骨で構成されており、骨と骨の間には椎間板という、腰にかかる負荷を和らげる組織があります。この椎間板が、骨同士がぶつからないようにする役割をになっているのです。
背骨の仕組みと働きについてお伝えしたところで、何故介護士にとって腰痛ベルトが必須かというと「介護士は、腰痛になりやすい姿勢を取ることが多い」からです。
腰痛になりやすい姿勢や動きとして、①前かがみの姿勢②重い物を持ち上げる、といった2つが挙げられます。
前かがみの姿勢と腰痛の関係
前かがみの姿勢は、上半身の重みの多くを腰で支えることになります。
前屈みの姿勢を取ると、4番目と5番目の腰椎の間に負荷が集中し、椎間板が押しつぶされたように変形する傾向があります。このとき椎間板には、約200㎏重の負荷がかかっているのです。
このような負荷が椎間板に繰り返しかかると、髄核(ずいかく)という、椎間板の中にあるゼリー状の組織が徐々にずれます。そしてずれた髄核が椎間板の外側にある線維輪(せんいりん)という組織が傷ついて起こるのが、ぎっくり腰なのです。
重いものを持ち上げる動作と腰痛の関係
重い物を持ち上げる動作というのは、背中の筋肉が収縮して、上下方向に押しつぶす力が椎間板に加わります。
椎間板が耐えられる負荷の限度は、340㎏重が限度とされています。
しかし、前かがみの姿勢で20㎏の物を持ち上げたときには、椎間板に400㎏重以上の負荷がかかることになるのです。
介護士の場合、高齢者をベッドから起こしたり、車いすやベッドへ移乗する時などに、上記2つの姿勢や動きを行います。
長時間毎日のように行うので、腰痛になるリスクが非常に高いのです。
加えて、加齢に伴い椎間板は徐々に薄くなっていきます。
年齢を重ねる程、腰痛のリスクはより高く重くなるのです。
その為、介護施設の中には腰痛ベルトを支給している事業所があります。
介護士は腰痛持ちが多い
上記にて、介護士は腰痛になるリスクが非常に高いことをお伝えしました。
しかし、いくら腰痛ベルト等で予防しても、20代や30代でも腰痛になる介護士は多いです。中には「腰痛が原因で介護の仕事を辞めた」という人もいます。
腰痛の種類の中には慢性腰痛と心因性腰痛があり、知っておくことで腰痛対策ができるでしょう。
慢性腰痛と心因性腰痛がどのような腰痛か紹介します。
慢性腰痛
腰痛が3ヶ月以上続く状態を「慢性腰痛」といい、慢性腰痛には2つのタイプがあります。
画像検査で異常が認められないのに腰痛が続く状態と、腰痛の原因がわかって治療したにも関わらず痛みが続く状態の2つです。
心因性腰痛
腰痛の原因のひとつに「心因性」があり、ストレスや生活環境などの心理社会的要因により腰痛が出現します。
そして、心理社会的要因が関係し腰痛が悪化した状態を「心因性腰痛」といいます。
介護士は夜勤も含めた不規則勤務に加え、膨大な業務や人間関係等で、常にストレスに苛まれています。
ストレスがたまる心理社会的背景が、介護士に腰痛持ちが多い理由のひとつでもあるといえるでしょう。
おすすめの腰痛ベルト
ここまで、介護士に腰痛持ちが多い理由についてお伝えしてきました。
「腰痛を予防しながら、介護の仕事がしたい」という人の為に、おすすめの腰痛ベルトについて紹介していきます。
腰痛ベルトは腰のみを支えるタイプのものから、肩甲骨や背骨といった上半身を支えるタイプのものまで多種多様です。
腰のみを支える腰痛ベルト
腰のみを支えるタイプは、コルセットタイプのものを指します。
腰のみを覆うので、仕事着の下に着ても目立ちにくいのが特徴です。
上半身を支える腰痛ベルト
上半身を支えるタイプは、赤ちゃんの抱っこ紐にコルセットがついたような形をしています。
腰のみを支えるタイプに比べて覆う範囲が広いので、人によっては装着しづらいというデメリットがあります。
しかし、肩甲骨や背骨を支えてくれるので、特に重たい人や拘縮がある人を介助しなければいけないときに、負担がより軽減されるというメリットがあります。
ドラッグストアやホームセンターでも買える腰痛ベルト
「腰痛ベルトって、どこで売っているの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
実は腰痛ベルトは、ドラッグストアやホームセンター等、身近なところで購入できるのです。
ドラッグストアであれば、湿布やテーピング等のコーナーと一緒に販売していることが多いです。
ホームセンターの場合は、製造業等の職人向けのコーナーで扱っていることが多いです。
職人さんは「身体が健康である」ことが仕事をする上で第一です。
その為ホームセンターでは、職人さん向けに作業時に使うツールケースや安全靴等を販売しています。
そのコーナーの中で腰痛ベルトを取り扱っています。
中には上半身を支える腰痛ベルトも販売していることがあるので、そちらを購入したいという人はホームセンターで選ぶのがおすすめです。
ネットよりも実物を見て買うほうがおすすめ
購入するときは、ネットで購入するよりも実物を見て購入するほうがおすすめです。
理由は「実際に身につけてみないと、自分の身体に合うかどうか分からない」からです。
一言で腰痛ベルトといっても多種多様です。自分の体格に合う腰痛ベルトを使わないと、余計に身体に負担がかかる場合があります。
また、実物を見て購入するもう1つのメリットとして「質を直接確認できる」というのがあります。
介護士で腰痛ベルトをする場合、服の下、肌着の上に装着することが多いです。
その為、購入する前に着け心地はどうか、汚れたときに手入れがしやすいかといったことを確認しておくとよいです。
おすすめはメッシュ素材でできた腰痛ベルトです。
夏は蒸れやすいため通気性が良く、手入れがしやすいメッシュ素材が良いでしょう。
メッシュ素材であればどの季節でも着用できます。
腰痛ベルトの購入に迷ったら整形外科へ
「自分に合う腰痛ベルトが分からない」という人は、整形外科へ相談してみましょう。
整形外科では、症状に合った腰痛ベルトの種類をアドバイスしてもらえます。
加えて、どのように使ったら良いか、どの期間使ったら良いかといった、自分の生活スタイルに合った使用方法も教えてもらえるでしょう。
腰痛に対する整形外科の診察内容は、問診で痛みのタイミングや程度などを確認し、歩き方や姿勢を調べたり、関節や神経、筋肉の状態を触ったりして調べます。
次に骨の変形や腫瘍の有無を調べる為、X線検査を行います。
椎間板や神経の状態を調べるときは、MRI検査も行います。
腰痛がある方の中には、診察や検査を行っても腰痛の原因となる所見が見られないことがあります。
しかし、診察や検査を行うことで、腰椎の直接的な障害だけでなく、命に関わる重大な病気を見つけるきっかけになることもあります。
痛みが続くようなら、受診することをおすすめします。
腰痛の原因が分からなくても、整形外科では電気による治療や、腰痛を予防できるアドバイスを行ってくれます。
介護の仕事を続けるなら腰痛ベルトを使おう
この記事では、介護士が腰痛になりやすい理由と、おすすめの腰痛ベルトの購入方法について紹介しました。
介護士という仕事柄、腰痛というのは一種の職業病です。
しかし「介護の仕事が好きで、ずっと続けたい」という想いがある人は、自分の身体を労ることも忘れないでおきましょう。
腰痛ベルトを着けて腰への負担を軽減するということも大切ですが、腰痛はストレスが原因ということもあります。
規則正しい生活を送り、時にはリフレッシュすることを忘れないでください。