日本では高齢化が進んでおり、認知症患者数も年々増加しています。
65歳以上では約600万人が認知症とされており、2025年には約700万人になる予測です。
このような状況から認知症ケアのスペシャリストは需要が高まっており、認知症ケア専門士が注目され始めています。
認知症ケアのスペシャリストとはどういった資格なのか、そして取得方法も気になる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、認知症ケア専門士の資格と役割を紹介します。併せて取得に必要な試験内容と勉強方法も紹介するので、資格取得を検討されている方はぜひ参考にしてください。
認知症ケア専門士とは
認知症ケア専門士は、認知症ケアに関する知識や技術を持った専門家の養成を目的とする民間資格です。
認知症の発症メカニズムや症状、介護や支援の方法、法律や制度に関する知識などの習得が求められます。
認知症ケア専門士の役割は?
重要な役割は、認知症に対する知識や技術の向上に加え、保健・福祉への貢献です。
具体的には、認知症の方や家族、介護施設の職員に対して適切なアドバイスや相談支援をおこない、より良い生活を送れるよう支援しています。
認知症ケア専門士の活躍できる場所
日本認知症ケア学会の発表では、32,319名の認知症ケア専門士が介護施設や医療機関、地域包括支援センター、福祉関連団体などに所属しています。
高齢化社会となった日本では、患者数が増加しているため、在宅ケアの需要が高まっており、今後さらに活躍の場が広がるでしょう。
認知症ケア専門士の認定試験
ここでは、認知症ケア専門士認定試験の受験資格から試験内容、難易度と合格率までを解説します。
- 受験資格
- 認知症ケア専門士の試験内容
- 難易度と合格率
認知症ケア専門士の受験資格
受験資格は「試験実施年の3月31日から過去10年間に認知症ケアの実務経験を3年以上有すること」です。
実務経験を満たせば、介護福祉士や介護支援専門員などの資格に限らず、すべての人に受験資格が与えられます。
2023年度の受験資格 | 認知症ケアに関する施設、団体、機関等において2013年4月1日~2023年3月31日の間に3年以上の認知症ケアの実務経験を有する者 |
認知症ケア専門士の試験内容
認定試験は、第1次試験のWEB試験と第2次試験の論述試験で構成されています。
第1次試験
第1次試験では、認知症に関する基礎知識やケアに関する実践的な内容が問われます。
試験分野は4つに分かれており、4分野すべてで70%以上の正答率が必要です。
試験はパソコン等を使用したインターネット上でおこなわれます。
以下で第1次試験の詳細を表にまとめていますので、ご参照ください。
試験分野 | (1) 認知症ケアの基礎 (2) 認知症ケアの実際Ⅰ:総論 (3) 認知症ケアの実際Ⅱ:各論 (4) 認知症ケアにおける社会資源 |
出題数 | 4分野各50問 合計200問 (五者択一) |
出題範囲 | 「認知症ケア標準テキスト」を基準とした内容 |
試験方法 | WEB試験(インターネット上でおこなう試験) |
合格要件 | 4分野すべて70%以上の正答率で合格 |
第2次試験
第2次試験は、第1次試験合格者のみ受験可能です。
試験方式は提示された認知症の事例に対して、規定用紙に記述して提出する論述試験です。
認知症の方が抱える問題や状況を想定し、適切なケアやサポートがおこなえるかを評価します。
以下で第2次試験の詳細を表にまとめていますので、ご参照ください。
受験対象者 | ・第1次試験合格者 ・過去5年以内の認知症ケア専門士認定試験の第1次試験の合格者 ・以下の条件すべてを満たした認知症ケア准専門士 ① 認知症ケア准専門士の資格取得後5年以内 ② 認知症ケア専門士認定試験の受験資格を満たしている |
試験内容 | 論述(認知症ケアの事例(3題)に対する論述) |
合格要件 | 次の5つの要件を満たした者を合格とする ①適切なアセスメントの視点を有している ②認知症を理解している ③適切な介護計画を立てられる④制度および社会資源を理解してい ⑤認知症の人の倫理的課題を理解している |
認知症ケア専門士の難易度と合格率
認定試験の合格率は平均52.5%です。
第17回試験 (2021年)では受験者3,063名、合格者1,645、合格率53.7%でした。
2人に1人は不合格となるため、民間資格としては比較的難しい資格といえるでしょう。
ただし、合格すれば認知症ケアの専門家として認定されるので、挑戦する価値がある資格です。
認知症ケア専門士おすすめの試験対策4選
認定試験の対策は独学で勉強できますが、対策講座やテキスト、過去問やアプリを使った試験対策がおすすめです。
それぞれの勉強方法を詳しく紹介します。
- 公式テキストで勉強する
- 過去問題・予想問題を繰り返す
- 隙間時間でアプリで勉強する
- 対策講座を受講する
公式テキストで勉強する
認定試験公式HPで注文できる「認知症ケア標準テキスト」が公式テキストです。
第1次試験は「認知症ケア標準テキスト」の第1巻〜4巻から出題されます。
過去問題・予想問題を繰り返す
認知症ケア専門士の公式過去問題集は存在しないものの、予想問題集や過去の受験者の情報をもとに作成された過去問題集が販売されています。
さらに、テキストと本番試験と同じ形式の問題集がセットになった予想問題集もあり、忙しくて公式テキストを読み込む時間がない方にはおすすめです。
問題を繰り返し解き、出題傾向を掴むことが、試験対策において非常に重要です。
隙間時間でアプリで勉強する
スマートフォンアプリなどを活用して、隙間時間を有効に使う試験対策の方法もあります。
一般に販売されている過去問題集や予想問題集には、スマートフォンで利用できる勉強アプリが付属されているテキストもあります。
認知症ケア専門士の試験は試験範囲が広いので、移動中などの隙間時間を使った勉強を心がけましょう。
対策講座を受講する
試験対策として公式対策講座が提供されており、公式テキストをもとにした重要ポイントを講師から学べます。
WEB上で配信されるためどこでも受講でき、さらに模擬試験の実施や解説の視聴も可能です。
参加期間内であれば、視聴回数にも制限はありません。
参加費が15,000円かかってしまいますが、公式テキストの重要ポイントから模擬試験の実施と解説まで学べるので有効な勉強といえるでしょう。
試験に合格したら登録申請が必要!
認定試験に合格した場合、正式に認定を受けるためには登録申請が必要です。
登録申請には、指定された書類の提出と15,000円の登録申請料の支払いをおこないましょう。
認知症ケア専門士は資格更新が必要!
認知症ケア専門士は資格の更新が必要であり、常に新しい知識や技術の修得が求められます。
資格更新には、日本認知症ケア学会の講座や、認定する他団体の講座を受講し、5年間で合計30単位以上の単位取得が必要です。
更新を忘れてしまった場合には、資格試験からやり直しになるので注意しましょう。
合格できれば認知症ケアのスペシャリスト!
認知症ケア専門士は、認知症の方やその家族を支援するための専門的な資格です。
合格には公式テキストや過去問を利用した勉強が必要であり、資格維持にも定期的な研修が必要です。
取得難易度は高いものの、これから需要が高まる資格といえるでしょう。
合格すれば認知症ケアのスペシャリストとして活躍できるので、ぜひ挑戦してみてください。