介護の仕事は人の役に立っていると感じられる場面も多く、利用者さんやご家族の方からも感謝されるため、やりがいを持って働いている人が大勢います。
一方で「きつい」「つらい」「続けられない」といったネガティブな声もあり、続けられずに退職する人もいます。
介護職をきついと感じる人は、この仕事のどういった部分に大変さを感じているのでしょう。
今回は介護職がきついといわれる理由、介護現場の実態について、介護職で実際に働く方のアンケートデータなどを交えつつ解説します。
介護現場で働く人はなにを「きつい」と感じている?
介護現場で働いている人たちは、どういった部分にきつさを感じているのでしょう。
レバレジーズメディカルケア株式会社が発行する「きらケア介護白書2022」では、介護職として働く18 歳~69歳男女総計2145名に対し実施した、アンケート調査結果がレポートとしてまとめられています。
以降レポートデータを交えながら現状を解説していきます。
介護の仕事で大変だと感じること
きらケア介護白書2022内の質問「介護の仕事で大変だと感じること」に対して、以下のような回答が上位にあがっています。
- 腰痛になりやすいなど身体的負担が大きい・・・58.7%
- 給与水準が低い・・・48%
- 人手不足で業務量が多い・・・42.7%
- 精神的負担が大きい・・・34.8%
- 不規則な生活で体調管理が大変・・・17.5%
最も回答が多かったのは「腰痛になりやすいなど身体的負担が大きい」です。
介護職の仕事は、利用者さんの身体を持ち上げたり、重い介護用品を持ち運んだりと、足腰に負担が掛かる作業が少なくはありません。そのため、腰痛を抱えながら働いている人は多く、職業病になっています。
厚生労働省の「業務上疾病発生状況等調査(令和2年)」をみても、腰痛(災害性腰痛)の発生が最も多い業種は、介護職を含む「保健衛生業」となり、全体5582件のうち約3割となる1944件を保健衛生業が占めています。
現在の職場に満足していない理由
もう一つ関連するアンケート結果を紹介します。
きらケア介護白書2022内の質問「現在の職場に満足していない理由」に対して、以下のような回答が上位にあがっています。
- 給与水準が低いこと・・・59.7%
- 人間関係の悪さ・・・37.8%
- 仕事の裁量度・・・20%
- 事業所の雰囲気や社風が悪い・・・18.1%
- 仕事におもしろみを感じない・・・17.2%
ご覧のように職場に対する不満において「給与水準が低いこと」が最も多い回答となっており、金銭的な面できつさを感じている方が多いようです。
さらに、きらケア介護白書2022では現在の収入に関するアンケート調査結果も報告されてます。
調査によると、正職員の手取りの月給は「15万円~20万円未満」が 38.5% と最も多く、次いで「20 万円~ 25 万円未満 (36.4%)」「25万円~30万円未満 (11.8%)」といった結果になっています。
非正規社員となると水準はさらに一段下がり「10 万円未満」が 38.9%と最も多くなっています。
介護職で働く人の中には、ギリギリの生活をされている方もおり、夜間手当が付く夜勤を増やしたり、別の仕事と兼業することで、不足分を補い生計を立てている人もいるようです。
介護職の仕事にやりがいを感じていても、収入の低さが原因となり、別の仕事に転職する人もいます。
介護職が「きつい」といわれる理由5つ
介護職がきついといわれる要素は、前述した以外にもまだまだあります。
ここではなかでも代表的な理由を5つ取り上げます。
多くの介護現場で抱える課題でもありますので、頭に入れておきたい部分です。
1.人手不足できつい
介護業界は慢性的な人手不足が続いております。
厚生労働省が公開した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」では、2023年度の段階で年間5.5万人の介護職員が不足していると述べられてます。
利用者さんの数に対し、介護職員の絶対数が足りてない職場も多く、そのような環境では必然的に介護職員一人一人の負荷が大きくなります。
休む間もなく働いても仕事が片付かない職場、人手が足りず毎日残業をしなくてはいけない職場などもあり、耐えられずに離職する人がでれば、さらに忙しくなるという悪循環に陥ります。
なお、人手不足はまさにいま現在がピークであり、将来的には高齢者人口が減ることで人手不足は緩やかに改善していく見込みです。
2.人間関係がきつい
介護現場では、上司や先輩後輩との人間関係、ケアマネジャーや社会福祉士など他職種の人との人間関係によるしがらみがあります。
また、介護施設内の閉じられた環境で、同じようなメンバーと長時間一緒に働くことになるため、独特の閉塞感もあります。
閉鎖的な環境により、合わないタイプの人が周りにいると、人間関係が大きなストレスとなり、精神的にきつく感じてしまうことがあります。
実際、収入が少ないなどの理由よりも、人間関係が原因となり介護職を辞める人が多い傾向です。
データとして、公益財団法人介護労働安定センターがまとめた「令和3年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」内の「前職をやめた理由」では、「職場の人間関係に問題があったため」が、収入的な理由などを追い越し、最も多い退職理由となっています。
人間関係が原因で精神的に参ってしまい、うつ病などを患ってしまう人もいますので、長く働き続けるためにはメンタル面のコントロールやストレス解消なども大切になります。
3.不規則な生活がきつい
介護施設は24時間体制で利用者さんを見守なければならないため、日勤だけでなく夜勤もあります。
そのため日夜逆転の生活、不規則な生活となりやすく「家庭と両立できない」「友だちと会えない」「健康面が不安」などの悩みを抱える人も多いです。
人手不足の介護施設では、急に出勤を求められたりすることもあるため、プライベートな予定が潰されてしまうつらさもあります。
4.将来的にきつい
いまの仕事に満足しながらも、将来に不安を感じている人が介護職には多い傾向です。
「将来家庭を持っても今の収入で続けられるのだろうか」「歳をとり体力が落ちても介護の仕事を続けられるだろうか」など、10年後20年後の将来を考えると思い悩んでしまう人が多くいます。
性別の傾向としては、女性よりも男性の介護職員のほうが将来について悩む人が多いです。
男性の介護職員の中には「自分の将来の見込みが立たなかったため」の理由で、退職していく人も少なくありません。
5.辛そうにしている姿を見るのがきつい
利用者さんの中には、身体の不自由な方、大病を抱えている方、高齢の方もおり、辛そうにしている姿や、身体が弱っていく姿を見ることもあります。
元気で健康な方ばかりではないため、辛そうな姿を見てると、自分まで暗くなってしまい「どうしてあげればいいのか」と悩みこんでしまうケースがあります。
介護職はきつい部分も多いがやりがいも大きい
以上のように、介護職にはきつい部分やつらい部分もあり、決して楽な仕事ではありません。
どうしても耐えられず、思い悩んだ末に辞めていく人もいます。
しかし、同時に介護職はやりがいも多い仕事であり、長く続けている人や天職と感じている人も大勢います。
人を介護する、サポートするという特性上、他の仕事ではなかなか感じることのできないやりがいやモチベーションを見いだせることもあります。
一長一短の職業でもあるため、片方だけでなく、良い面と悪い面の両面を見ていくことが大切です。