介護職員の活躍の場は、有料老人ホーム・デイサービス・グループホーム・サービス付き高齢者住宅・病院など多岐にわたります。
中でも特別養護老人ホーム(以下、特養)は、高度な介護技術を必要とする職場です。
よって特養で働くのは、ベテランの介護職員であってもきついと感じることが多いです。
では、特養とはどんな施設で、仕事内容はどういったものなのでしょうか?
今回はそのような疑問にお答えしながら、特養がきついといわれる理由や、特養で働くやりがいについて詳しく解説していきます。
介護職員が特養をきついと感じる理由
介護職員が特養をきついと感じる理由には、大きく分けて次の4つがあります。
- 介護度の高い人が多く体力的にきつい
- シフト制で生活リズムが崩れやすい
- 利用者さんとの意思疎通が難しい場合がある
- 緊急時の対応を求められる場合がある
これらの項目について順に説明します。
特養で働く前に認識しておくと、ある程度覚悟ができるでしょう。
介護度の高い人が多く体力的にきつい
特養は要介護度が高いため、他の老人施設よりも身体的な介助が多くなります。
後述しますが、特養の入所条件は基本的に要介護3以上と決められているからです。
身体が不自由な利用者さんだと、移動の度に介護職員が身体を支える必要があります。
そのため特養の職員は体力的にきついと思うことが多いのです。
シフト制で生活リズムが崩れやすい
特養の勤務形態は、夜勤を含むシフト制のため生活リズムが崩れやすくなります。
勤務時間もバラバラなので、日々の体調管理が難しいのです。
また家庭がある方なら、家族と生活時間がズレるために、すれ違いが生じる場合もあるでしょう。
利用者さんとの意思疎通が難しい場合がある
特養は寝たきりや認知症の利用者さんが多いため、何かと意思疎通の難しさを感じるでしょう。
小さな変化で体調が激変することがあるので、利用者さんの様子を常に見守っておく必要があります。
言葉でのコミュニケーションが難しい面も、きついと感じる理由の一つとなります。
緊急時の対応を求められる場合がある
高齢者が多いため利用者さんの容態が急変し、ときには救急車を呼ぶような事態となることも少なくありません。
特に夜勤のときは職員の数も少ないため、経験が浅いと戸惑う場面も出てきます。
逆に特養を経験しておけば、他の介護施設でもきっと役に立つでしょう。
特養とはどんな施設なのか?
特養とは介護保険適用の施設で「特別養護老人ホーム」と呼ばれています。
特養は介護保険の自己負担分と生活費を合わせて、1ヶ月の負担額が月額5〜10万円程で済みます。
月額20万〜30万円かかるといわれる介護付有料老人ホームと比べると、特養は利用しやすいのです。
そのため入居希望者が多く、常に入居待ちとなっています。
特養に入居するには一定の条件があります。
それは「要介護3以上と認定されている65歳以上の高齢者」ということです。
ただし、認知症や知的障害などで日常生活が困難な方なら、要介護1や2の認定であっても特例で入居できる場合があります。
そんな特養の施設タイプには次の2種類があります。
- 従来型
- ユニット型
それぞれの特徴について解説します。
従来型
従来型(多床型)は病棟のような形態で、4人程度の入居者が同じ部屋で生活します。
1フロアに40〜50名程度の利用者さんがいて、複数人の職員で担当しています。
新人スタッフはベテランから直接学ぶことができますし、ユニット型に比べて職員が多いので安心感はあるでしょう。
ユニット型
ユニット型は、利用者さんのプライバシーに配慮し全室個室となっています。
1フロアが10部屋(ユニット)ほどで構成されており、基本的に少人数の専任の介護職員が担当します。
ユニット型はスウェーデンが発祥で「新型特養」とも呼ばれているようです。
個人を尊重する世相に伴い、2001年以降は特養もユニット型で作られることが主流となりました。
特養の仕事内容
特養の介護職員は、利用者さんの生活全般をトータルサポートします。デイケアなどとは違って、夜間の介護も担当することになります。
また普段の生活サポートだけでなく、最終的には看取りを担当するかもしれません。
利用者さんが最期を心穏やかに迎えられるよう、それまでサポートするのも介護職員の仕事です。
大まかな仕事内容としては次の4つです。
1.食事介助
2.入浴介助
3.排泄介助
4.移動介助
これらの仕事の合間には利用者さんのその日の状態を記載して、次の勤務の職員へ引き継ぐ仕事もあります。
食事介助
利用者さんによって心身状態は様々です。
利用者さんの日々の体調に合わせて、栄養士は栄誉バランスや消化しやすい食事を考えています。
介護職員は利用者さんの食事を介助したり、のどに詰まらないように見守りながら食べてもらいます。
入浴介助
入浴介助では、利用者さんの着脱衣のサポートと入浴のサポートをします。
利用者さんは足腰も弱まっているので、転倒しないか防止するのも介護職員の大切な仕事です。
介護職員の負担を減らすように、機械浴槽を設備している施設も増えてきました。
入浴が難しい利用者さんには、清拭といって体を拭き、体を清潔に保ちます。
排泄介助
1人でトイレに行くのが難しくなった利用者さんの排泄サポートを行います。
またおむつをしている利用者さんには、定期的におむつのチェックを行います。
移動介助
一度転倒してしまうと、それが原因で寝たきりになる高齢者は多いです。
そんな転倒事故を防ぐために、立ち上がったり歩いたりするときの介助を行います。
施設では適宜レクリエーションもあるので、介護職員はその際にも移動のサポートを行います。
特養がきついと感じるときの乗り越え方とやりがい
特養は身体介助の負担以上に、ときには認知症などの症状で、何度も同じことを言われる、些細なことで腹を立てて暴言を吐かれてしまう、などの心理的な負担もあります。
特養がきついと感じるときには、どう乗り越えたら良いでしょうか?
また特養でやりがいを感じるのはどんなときでしょうか?
ここでは特養がきついと感じたときの乗り越え方とやりがいを感じる場面についてご紹介します。
利用者さんとの深い繋がりを感じる
特養では、看取りも含めて利用者さんの人生に向き合うことが多いです。
他の介護施設と比べて特養は長期入所されるので、利用者さんとの深い繋がりを感じやすくなります。
利用者さんやそのご家族からも感謝される機会が多いのは、やりがいに繋がるでしょう。
特養は平均年収が高い
介護業界の1ヶ月の平均給与額は316,610円であり、一般的に介護業界は給与が低いといわれています。
しかし、特養の1ヶ月の給与は平均で345,590円となっており、介護業界の中では待遇が良い仕事です。
また夜勤では「深夜割増賃金」や「時間外割増賃金」など手当が支給されます。
なお夜勤手当の相場は、1回あたり5,000〜10,000円となっています。
介護職員としてのスキルアップ
特養は要介護度の高い利用者さんをサポートする施設であり、認知症の方も多いです。
よって自ずと高度な対応能力と介護スキルが身につきます。
また夜勤勤務のときは、少ない人数で何でも対応できる力も必要となります。
特養の仕事を経験しておけば、介護士としての高度な技術が身につくことでしょう。
つまり特養で働いた経験は、介護職員としての今後のスキルアップにも繋がります。
特養で働きたい人のために
今回の記事では、なぜ特養はきついといわれるのか、特養の仕事内容ややりがいについて解説しました。
特養は入所待ちの方も多く、今後施設が増えることが予想されます。
また、繰り返しになりますが、特養には高度な介護技術が必要です。
さらに従来型では職員のチームワークが大切となり、ユニット型ではより個人の責任感が求められます。
確かに特養は高度な介護技術が求められ、きつい職場だといわれていますが、その分今後の処遇改善とご自身のスキルアップが期待できます。
特養での勤務経験がある方は、転職する際に高い介護技術がある人だと認識され、キャリアアップがしやすくなる場合もあります。
このように特養は介護士としてスキルアップしたい方にもおすすめの職場といえるでしょう。