介護士として働く方の中には、保育士の資格に興味を抱く方がいます。
もしかすると「介護士の資格があると保育士の資格が取りやすい」と耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
本当に保有している介護士の資格により保育士の資格が取得しやすくなるのであれば嬉しいですよね。
そこで今回は「介護士の資格があると保育士の資格が取りやすいのか」という疑問にお答えしながら、保育士の資格を取得する方法や保育士試験の難易度も解説します。
加えて、介護士と保育士の違いから資格を取得するメリットも紹介しますので、保育士の資格取得を考えている方はぜひ参考にしてください。
保育士は介護士の資格があると取りやすい?
介護士が保育士の資格が取りやすいといわれる理由は、介護福祉士の資格があると保育士試験の筆記試験で免除される科目があるからです。
なお、介護福祉士以外の介護の資格では、保育士試験で免除される科目はありません。
介護福祉士の資格を取得していると保育士試験で免除される科目は「社会的養護」「児童家庭福祉」「社会福祉」の3科目です。
保育士の試験は9科目あり、9科目中3科目も免除されます。介護福祉士の資格を保有している方にとって、勉強の負担が軽減されるのはとても大きなメリットではないでしょうか。
介護士が保育士の資格を取得する方法
介護士が保育士の資格を取得する方法を紹介します。
保育士の資格取得方法は2通りあります。
- 厚生労働大臣が指定する「特定保育士養成施設」学び卒業する
- 年2回実施される「保育士試験」を受験し合格する
介護士が保育士の資格を取得するなら、保育士試験の受験がおすすめです。
理由は、保育士養成施設で学ぶとなると入学の勉強が必要だったり、時間やお金もかかったりするからです。
保育士は門戸が広く誰でも挑戦しやすい資格といえます。
保育士試験の受験資格は短期大学卒業程度とされていますが、最終学歴が高校卒業でも「児童福祉施設で実務経験2年以上かつ総勤務時間数2,880時間以上従事したもの」など条件を満たせば受験資格を得られます。
保育士の国家試験の難易度は?
保育士の国家試験は非常に難易度が高く、令和3年度の保育士試験では8万3,175名の方が受験し、たった1万6,600人しか合格していません。
合格率にすると19.96%となり、合格者は約5人に1人のみです。
なぜこれほどまでに合格率が高くないのか、その理由は以下のようなことがあげられます。
- 受験科目数が多い
- 筆記試験と実技試験がある
- 全科目で6割以上の点数が必要
- 受験のハードルが低い
それぞれの理由を詳しく説明します。
1.受験科目数が多い
上述したように、保育士の筆記試験は9科目もあるため難易度が高いです。
とはいえ、介護士の仕事は保育士の仕事と共通するところがあり、前提知識がある上で勉強ができるため保育士試験の知識は身につきやすいでしょう。
加えて、介護福祉士の資格がある方は3科目免除され試験範囲が狭くなるため、その分ハードルも低くなります。
2.筆記試験と実技試験がある
保育士試験の合格率が低い理由に、実技試験があることがあげられます。
筆記試験に合格した後に実技試験に挑むことができ、実技試験は音楽、造形、言語の3分野から2分野選択します。
表現の豊かさや子どもに伝わりやすいかなどが評価になるので、入念な準備が必要です。
3.全科目で6割以上の点数が必要
保育士試験はすべての科目で6割以上の点数が必要であり、6割未満の科目が1つでもあれば不合格となります。
つまり、どの科目も網羅して勉強しなければならないことが合格率に影響しています。
4.受験のハードルが低い
保育士試験の受験要件は短期大学卒業程度のため、受験のハードルが低いです。
試験に関する知識がなくても受験できることにより、合格率が低くなりやすい傾向にあります。
保育士と介護士はどっちが働きやすい?
保育士の資格取得を考えている方の中には「保育士と介護士のどちらが働きやすいか」と考える方がいるでしょう。
どちらがよいかというと、一概に決めることはできません。
というのも、どちらも人に関わる職業ではありますが、対象者や働き方、働く場所も全く異なるからです。
各資格の特徴を知ることができれば、あなたにとってどちらが働きやすいのか考えることができるでしょう。
次の項目で保育士と介護士の違いを紹介します。
保育士と介護士の違い
保育士と介護士の違いを3つ紹介します。
- 対象者の違い
- 仕事内容の違い
- 働く場所の違い
それぞれ説明します。
1.対象者の違い
まず、保育士と介護士は対象者が大きく違います。
保育士が対象とするのは「0歳〜6歳までの乳幼児」です。加えて、保護者への支援を行う専門性も求められます。
介護士が対象とするのは「高齢者や身体障がい者など介護を必要とする人」です。加えて、介護者のサポートも必要です。
2.仕事内容の違い
次に、保育士と介護士の仕事内容の違いを紹介します。
保育とは養護と教育が合わさったものであり、保育士は乳幼児をただ預かり世話をするだけでなく、教育も含め知識とスキルを駆使しています。
介護士は介護を必要とする人の日常生活を支援する職業であり、身体介護から生活援助に至るまでが仕事内容です。
3.働く場所の違い
保育士と介護士は働く場所が違います。各資格の働く場所を紹介します。
保育士の働く場所
- 保育園
- 認定こども園
- 小規模保育園
- 企業内保育園
- 乳児院
- 児童養護施設
- 学童保育施設(学童)
- 放課後等デイサービス
介護士の働く場所
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- デイサービス
- 通所リハビリテーション
- グループホーム
- 身体障がい者施設
- 訪問介護サービス
保育士と介護士の月給・年収の違い
保育士と介護士の月給・年収の違いを紹介します。
平均年齢と勤続年数、賞与もまとめています。
保育士 | 介護士 | |
平均年齢 | 38.1歳 | 44.7歳 |
平均勤続年数 | 8.8年 | 8.7年 |
平均月額給与 | 25万6,500円 | 31万6,610円 |
平均年間賞与 | 74.4万円 | 52.1万円 |
平均年収 | 382.2万円 | 432万320円 |
保育士の平均年収は382.2万円、介護士の平均年収は432万320円です。介護士のほうがおおよそ50万円も年収が高いです。
なお、上記の介護士の給料と年収は、介護に関する資格を保有している介護士と保有していない介護士をすべて合わせた平均値です。
介護業界は介護に関する資格を保有している人には資格手当がつくため、有資格者は平均より給料が高く、無資格者は平均より給料が低くなる傾向にあります。
そのため、一概に介護士は保育士より給料が高いとは言い切れません。
なお、給料は地域や職場の方針によって大きく異なります。調査結果だけを鵜呑みにせず、住まいの地域の平均給料や希望している勤務先の給料を確認しましょう。
介護士が保育士の資格を取得するメリット
介護士が保育士の資格を取得するメリットを紹介します。
- 幅広い分野に対応できる
- 働く選択肢が広がる
- 人生のスキルアップができる
1.幅広い分野に対応できる
介護士が保育士の資格を取得することで、幅広い分野に対応できるようになります。
例えば、保育園には障がいがある乳幼児が通っていることがあります。
介護士の経験を活かして、どういった支援が必要なのか多角的な面から考えることができるでしょう。
また、乳幼児のご両親が介護に関する悩みを抱いていたら、一緒に考えたり助言したりすることもできるでしょう。
2.働く場所の選択肢が広がる
介護士の仕事ができ保育士の資格もあれば、働く場所の選択肢が広がります。
ひとつの仕事を長年続けていると「新しい環境で違う仕事を始めたい」と思うことがあるでしょう。
そういったときに保育士の資格があれば、選択肢が一気に広がるので異なる分野にチャレンジしやすく新鮮な気持ちで働くことができます。
介護士の経験と保育士の資格を活かし、求人によっては一般企業への転職も期待できます。
3.人生のスキルアップができる
保育士の資格を取得すれば、人生においてのスキルアップを期待できます。
今後仕事以外の場面で、高齢の方の支援や乳幼児の保育が必要となる場面があるかもしれません。介護士と保育士の両方を学び実践したスキルを身に付けていれば、そのような場面でも対応できるでしょう。
保育士と介護士の資格が両方あると役立つ!
今回は「保育士になるには介護士の資格があると取りやすいのか」を紹介しました。
介護福祉士の資格があれば、保育士の筆記試験が3科目も免除されるため資格が取りやすいです。
もし介護福祉士の資格が無くても、介護士の仕事は保育士試験と重なる内容があるため、勉強しやすいでしょう。
とはいえ、令和3年度の保育士試験の合格率は19.96%と狭き門です。
合格するためには試験科目をまんべんなく勉強することはもちろん、実技試験の準備も必要となります。
難易度が高い保育士試験ですが、介護士と保育士の資格を両方所有すれば、今後の人生において大きく役立つことが期待できます。