介護施設や在宅訪問サービスで利用者さんの身のまわりのサポートをする介護士・介護福祉士。
介護士と介護福祉士は名前が似ていて混同されやすい言葉ですが、実は明確な違いがあります。
この記事では介護士と介護福祉士の違いをわかりやすく解説していきます。
気になる給料の違いや4つの資格取得方法についても解説いたしますので、ぜひご覧ください。
介護士・介護福祉士の違いは?
「介護士」は介護職員とも呼ばれ、介護の業務をしている介護従事者を指します。
一方「介護福祉士」は介護福祉士国家試験に合格した資格保有者のことを意味します。
つまり、介護士の中には国家資格を有する「介護福祉士」も含まれているということです。
国家資格の有無により、「資格なしの介護士」と「資格ありの介護福祉士」では給料やキャリアアップの待遇にも違いがあります。
項目ごとに詳しくみていきましょう。
資格あり=介護福祉士、資格なし=介護士
介護士・介護福祉士の違いは国家資格である介護福祉士資格の有無です。
「介護士」は介護の業務をしている人を指すため、無資格であっても「介護士」と名乗れます。
介護士は介護職員とも呼ばれています。
一方「介護福祉士」は介護福祉士の資格を有する人のことを指します。
介護福祉士の資格は国家資格です。
介護福祉士養成校での講習や実務者研修を経て国家試験に合格すると取得できます。
時には資格ありの介護福祉士も資格なしの介護士と一括して「介護士」と呼ばれることがあります。
こちらの記事では資格の有無による違いを比較するために、資格なしの介護職員を「介護士」として紹介していきます。
勤務先
介護士・介護福祉士の勤務先には大きな差はありません。
勤務先は老人ホームやデイサービスなどの介護施設をはじめ、病院などの医療施設、直接利用者さんのお宅へ訪問する在宅訪問サービスなど多岐に渡ります。
介護現場のニーズは常に高く、超高齢化社会となっている現在は特に必要とされている職業です。
就職・転職
ニーズの高い介護士・介護福祉士は全国で求人があります。
資格の有無で就職・転職のしやすさに差があるのかみていきましょう。
求人サイトでは、介護福祉士の資格を「必須」または「歓迎」と表記している施設も見受けられます。
介護サービスの質向上を図るため、勤務先によっては資格を有する介護福祉士を優先して雇用している場合があるためです。
介護福祉士は介護現場の中でも上位の資格なので、より多くの現場で活躍する機会を得られます。
就職や転職には、介護福祉士の方が介護士よりも優位になることが多いといえます。
仕事内容
介護士・介護福祉士の仕事内容に大きな差はありません。
どちらも利用者さんの身のまわりのサポートをすることが仕事です。
具体的には、食事の介助、入浴の介助、排せつの介助などを行います。
介護士・介護福祉士が担う仕事の幅は非常に広いです。
さらに就職後も現場での業務内容やキャリアアップに合わせて研修を受講し、可能な業務を広げていく人が多いです。
例えば資格をもっていない介護士の場合、食事や入浴などの身体的な介護に携わる際には「介護職員初任者研修」を受ける必要があります。
また、喀痰吸引など一部の医療行為を担う場合には、介護士・介護福祉士ともに「実務者研修」の受講が必要です。
キャリアアップ
国家資格のある介護福祉士は、介護についてのより幅広い知識や技術を身に着ける機会を多く与えられています。
経験を積んだ介護福祉士は、介護施設などで管理職や施設長に務めるチャンスも得られます。
役職に応じて役職手当が支給される場合もあり、多くの職場では昇給を見込めます。
また、介護福祉士は、5年以上の実務経験を経てケアマネージャーや養成施設の教員を目指すこともできます。
キャリアアップを目指すのであれば、資格なしの介護士よりも資格ありの介護福祉士が有利だといえるでしょう。
給料
介護士・介護福祉士の給料には差があります。
国家資格を有する介護福祉士には資格手当が付くため、介護士に比べて介護福祉士は給料が高いです。
また、介護福祉士はキャリアアップの機会も多く与えられるため、役職に早く就ける可能性も高まります。
資格手当に加え、役職者手当も加算されるとなると、介護士との給料の差はさらに大きくなるでしょう。
「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」を参考に介護士・介護福祉士の具体的な給料の差をみてみましょう。
令和3年9月の調査結果での平均給料は介護福祉士328,720円、介護士271,260円でした。
介護福祉士の方が5万円以上1ヶ月の平均給料が高いという結果になりました。
1ヶ月の給料が5万円違うとすると、単純計算で1年では60万円もの差が出ることになります。
1年で2ヶ月分の給料と同等の差額になるのです。
さらに長く働き続けるのであれば、生涯獲得賃金は大きく差が開くことになります。
また、資格手当は施設によって引き上げ・新設が行われます。
介護現場において資格手当の引き上げ・または新設を行った施設は19.9%でした。
介護福祉士資格の取得により、今後更なる給料アップが見込める可能性があります。
給料アップを狙いたい方は、介護福祉士の資格を取得することをおすすめします。
介護福祉士の資格を取得する方法
介護福祉士の資格を取得する方法は大きく分けて以下の4つです。
- 福祉系の高等学校ルート
- 介護福祉士の養成施設ルート
- 実務経験ルート
- 経済連携協定ルート
なお法改正により、取得方法が変更されている場合があるため、卒業年度などに合わせて適宜確認が必要です。
①福祉系の高等学校ルート
福祉系の高等学校を卒業した後、介護福祉士国家試験に合格すれば介護福祉士として働くことができます。
平成21年度以降の入学者は国家試験の実技試験を免除されますが、平成20年度以前の入学者は実技試験または講習を受ける必要があります。
特例高校などでは平成20年度以降入学であっても実技試験または講習を受けたり、受験前に実務経験が必要な場合もあります。
高等学校受験前に資格取得方法を確認しましょう。
②介護福祉士の養成施設ルート
平成28年度までに卒業した場合は卒業と同時に介護福祉士資格を与えられていました。
平成29~令和8年度末までに卒業する場合は、養成施設を卒業するとともに5年間限定の介護福祉士資格を取得できます。
継続して資格を保有するには、卒業後5年間連続での実務経験が必要です。
実務経験が5年未満の場合は国家試験を受験し合格する必要があります。
令和9年以降に卒業する場合は、卒業後に国家試験を受験し合格することで介護福祉士の資格を取得できます。
養成施設に通う年数は通常2年以上です。
しかし、社会福祉士養成施設等や保育士養成施設を卒業した場合、1年制の養成施設で卒業資格を得られます。
養成施設卒業者が介護福祉士国家試験を受験する場合、実技試験はいずれも免除されます。
③実務経験ルート
実務経験ルートは介護士が働きながら介護福祉士資格の取得を目指すルートです。
介護現場での実務経験3年に加え「介護職員実務者研修」を受講することにより、介護福祉士の国家試験を受験することができます。
実務経験ルートの場合、国家試験の実技試験は免除されます。
④経済連携協定ルート
外国籍の方が日本で介護福祉士の資格を取得するルートです。
介護福祉士候補者が実務経験を3年以上積むことにより、介護福祉士の国家試験を受験することができます。
候補者は国家試験で実技試験・筆記試験を受けるか、実技試験を免除される代わりに講習・研修を受けた後筆記試験を受けるかを選択できます。
給料アップを狙うなら資格ありの介護福祉士がおすすめ
介護士・介護福祉士の大きな違いは国家資格の有無です。
現場では、給料やキャリアアップなど資格を有する介護福祉士が優遇される場面が多くあります。
給料アップを狙うなら資格を取得して介護福祉士として働くのがおすすめです。
現在資格なしの介護士として働いている方も実務経験や研修によって受験のチャンスがあるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。