グループホームでケアマネとして働き始めた人の中には「ケアプランをどのように作成したら良いか分からない」という人もいるでしょう。
今まで介護職員として勤務していたけれど、ケアマネとしての勤務は未経験であれば、より難しいと感じます。
この記事では、ケアプランを作るときにどんな情報が必要かお伝えします。
また「ケアプラン作成の例が欲しい」という人へ、何を例にすると良いかも紹介します。
グループホームとは?
介護保険制度上でのグループホームは「認知症対応型共同生活介護ホーム」を指します。
一般的にグループホームは、病気や心身の障害によって通常の生活が困難な人たちが、専門職の支援を受けながら集団で生活するための住宅になります。
身体機能は保てている人が多いので、特養のように機械浴がないことが多いです。
しかしオムツ交換や食事介助といったケアは少ないので、比較的時間に余裕を持って業務を行うことができます。
ケアプランとは?
ケアプランは、介護支援専門員(以下ケアマネ)がサービス利用者の生活状況や心身の状態を勘案して作成する、介護サービス計画のことです。
介護度によって使えるサービスの限度は異なります。
ですので「利用者や家族は何のサービスを使いたいか」を、十分に把握する必要があるのです。
介護サービスの種類
介護サービスには「居宅サービス」と「施設サービス」があります。
居宅サービスとは、在宅生活をする利用者向けのサービスで、訪問介護やデイサービスがあります。
対して施設サービスは、介護施設に入所している人向けのサービスです。
特養やグループホームに入所している人が対象になります。
どちらの介護サービスを利用する場合でも、ケアプランは作成します。
「居宅サービス」と「施設サービス」の違い
居宅サービスと施設サービスの違いは「複数の事業所が関わっているかどうか」です。
居宅サービスの場合、下記の事業所が関わります。
- 訪問介護
- デイサービス
- ショートステイ
- 福祉用具
また居宅サービスの場合、介護度の更新時期になると「サービス担当者会議(以下担会)」を開く必要があります。
担会には「現在のケアプランで、各事業所が適切な介護サービスを提供できているか確認する」以外にも「利用者や家族、各事業所で困っていることがないか確認し、必要に応じて助言や協力をする」という目的があります。
このように、居宅サービスでケアプランを作成する場合は、複数の事業所の協力が必要不可欠なのです。
対して「施設サービス」は、1つの事業所でサービス提供できます。
施設内に介護職員や看護師、生活相談員がいるので、何かあったときにすぐ情報共有できるのが特徴です。
また施設サービスは、日中だけでなく夜間の様子も把握することができます。
「夜眠れないから、日中どのように対応すれば良いか」「夕方帰宅願望が強くなるから、どのように対応すれば良いか」などを共有できるので、より入居者の状態に合わせたケアプランを作成できるのです。
グループホームでのケアプラン作成で重視すること
グループホームでのケアプラン作成で重視することは「本人がグループホーム内でより良い生活を送れるようにすること」です。
職員が良かれと思ってやったケアが、実際は本人にとって不必要なケアだったということがあります。
また「認知症だから何も分からないだろう」と思っている職員もいますが、認知症を持っていても、職員からの行動や言動は覚えています。
職員優位なケアが、結果的に入居者の心身状態を悪くしてしまうことがあるのです。
ですのでケアプランを作成するときには「本人がより良い生活を送れるためには、どうすれば良いか」ということを考慮しましょう。
在宅からグループホームへ入所するときに情報収集すること
在宅からグループホームへ入所するときに情報収集することとして、下記3つがあります。
- ADLやIADL
- 近隣住民や地域との交流
- 家族の状況
詳しく説明していきます。
ADLやIADL
1つめは「ADLやIADL」です。
ADLの項目では主に歩行や更衣、入浴の様子について情報収集を行います。
入浴介助を例にあげると「入浴は訪問介護を利用している。浴槽のまたぎはできるが、洗身や洗髪のやり方が分からないので、ヘルパーが行っている。」と、具体的に把握するようにしましょう。
そうしないと、グループホームの職員は「自宅でどのように入浴していたのか、分からない」と混乱してしまうからです。
IADLの内容としては「掃除や金銭管理、服薬状況」があります。
施設に入所するのだから、一見関係ないと思うでしょう。
ですが「お金に厳しく、常に財布を持ち歩いていた」「薬を飲むのが嫌だった」という情報が得られれば、グループホームで「お金を盗られたと怒るかもしれない」「服薬介助をするとき、拒否があったり吐き出したりするかもしれない」といったことを想定することができるのです。
IADLの情報も、可能な限り把握しておくようにしましょう。
近隣住民や地域との交流
2つめは「近隣住民や地域との交流」です。
訪問介護や通所系サービスを利用している人であれば、本人の人柄や社会交流の頻度などを把握しましょう。
「人見知りしやすい性格で、集団行動は好まない」「お盆や彼岸のお墓参りには必ず行っていた」という、具体的な情報を知ることで、グループホームに入所しても習慣を変えずに生活することができます。
家族の状況
3つめは「家族の状況」です。
家族の就労の有無や健康状態、住んでいる場所(遠方かどうか)などの情報が必要です。
また、すでに亡くなった子どもや配偶者がいる場合、死別の原因、その年なども可能な限り情報収集しましょう。
高齢者の場合、小さいときに亡くなった子どもが妄想の対象として出てくることもあります。
また本人の輝いていた頃のエピソードや、人生における最も悲しい出来事についても把握しておきましょう。
本人の過去を知り、想いに寄り添うことができれば、グループホームでより良い生活を送ることができるからです。
ケアプランの例は、他のケアマネが作ったケアプランを参考にする
「どんな情報を収集すれば良いか分かったけれど、どうやってケアプランを作成すれば良いか分からない」「ケアプランの例が欲しい」という人もいるでしょう。
なぜなら、ケアプランの作成方法は、事業所によって異なるからです。
「他のケアマネもしくは前任者は、どのように作成していたか」を把握し、作成方法を真似するところから始めましょう。
やり方を真似ながら何回も作ることで、自然と作成できるようになります。
「前任者がいなく、自分で1から作らなければいけない」という場合は、ネットで検索すると文例が出てきます。
複数の症例に合わせたケアプランが出てきますので、参考にできます。
新規入所から1ヶ月は試行錯誤
ケアプラン作成で注意することは「最初はケアプランと異なって当たり前」と考えることです。
これはベテランのケアマネでも同様の経験をします。
在宅から施設に入所すると、環境が変わるので本人も混乱することが多いです。
また職員側も「どのように対応すれば良いか分からない」と考えながらも、手探りでケアを行います。
「最初の数日は緊張して落ち着いていたけれど、慣れてくると夜起きて徘徊するようになった」ということもあれば「最初は環境の違いから帰宅願望が強かったけれど、数日経過すると落ち着くようになった」ことも想定されます。
「ケアプラン通りに行かない」と悩むのではなく「最初はケアプラン通りに行かなくて当たり前」と考えるようにしましょう。
ケアプランは、本人がより良い生活を送れるように作る
在宅での生活と異なり、グループホームは数人で共同生活を送る施設になります。
環境が異なるので、本人も混乱しがちです。
ケアプランを作成するときは「本人がより良い生活を送るにはどうすれば良いか」を考えながら作りましょう。
ケアプランの作り方が分からないときは、先輩や前任者が作成したケアプランを参考にしましょう。
他者の模倣をして何回もこなしていくと、自然とできるものです。
ケアプランは、職員が適切なケアを提供するための指針にもなります。
ですが職員優位ではなく、あくまでも本人がより良い生活を送れることを心掛けましょう。