介護士の資格はたくさん種類がある上に、取得までの条件が複雑で分かりづらいですよね。
国の制度改正で名称が変更している資格や、統一されて廃止された資格もあります。
介護職が未経験者でも取得できる資格から、介護士としての実務経験がないと試験に挑戦できない資格までさまざまです。
そこでこの記事では、介護士として活躍したい未経験の方やキャリアアップのために資格取得を考えている方へ向けて、資格の種類と取得するための条件を解説します。
未経験者が取得すべき介護士の資格と条件
介護職未経験の方が就職や転職しやすい資格は以下の3つです。
- 介護職員初任者研修
- 介護事務
- レクレーション介護士2級
全ての資格を取得しないと就職や転職ができない訳ではありませんが、取得しておくと履歴書や面接でアピールポイントになります。
3つの資格を取得するには、介護士としての実務経験や他の資格がないと受講できないといった条件はなく、誰でも受講できます。
1.介護職員初任者研修
介護職職員初任者研修は、介護の基本的な知識とスキルが学べる研修です。
介護職員初任者研修を取得すると、利用者さんの自宅に訪問し、掃除・洗濯・調理などの生活援助や、入浴・食事・通院などの身体介護を行えます。
未経験から介護福祉士を目指す方の第一歩といえる資格です。
介護職員初任者研修を受講する条件
介護職員初任者研修を受講するための条件は特にありません。
特別な資格は必要なく、年齢や学歴、実務経験に関係なく誰でも講習を受けることができます。
介護職員初任者研修を取得するには
受講科目は9科目で講義と演習で組まれた130時間のプログラムと、修了試験に合格すると資格を取得できます。
資格取得までの期間はおよそ2ヶ月です。
主に民間の介護スクールで取得するのが一般的で、どのスクールでも厚生労働省が定めた同一のカリキュラムを学ぶことができます。
2.介護事務
介護事務は、利用者さんを直接的にお手伝いする業務ではありませんが、介護施設や事業所を支える存在です。
介護事務の資格は、介護サービス施設・事業所の受付業務や介護報酬請求業務(レセプト作成)、介護に関する手続きの知識を習得できます。
就職や転職において、介護職員初任者研修の資格保持者や介護職の経験者が採用されやすいのは事実です。
ですが、慢性的な介護士不足なため介護報酬などの計算や事務作業は、介護士の方が兼務で行っている施設も多くあります。
介護事務もできる介護士として、介護職員初任者研修と合わせて介護事務の資格を保有しているとアピールポイントになるでしょう。
介護事務を受講する条件
介護事務の資格を受ける条件は特にありません。誰でも受講できる資格ですが、運営団体によって資格の名称が違います。
資格の名称 | 主催している団体 | 取得できるスクール |
ケアクラーク(R) | 日本医療教育財団 | ニチイ・各専門学校 |
介護事務管理士(R) | 技能認定振興協会(JSMA) | ソラスト・ユーキャン |
介護事務実務士(R) | 医療福祉情報実務能力協会 | ヒューマンアカデミー |
介護報酬請求事務技能検定試験 | 日本医療事務協会 | 日本医療事務協会の介護事務講座 |
介護事務の資格を取得するには
介護事務の資格を取得するには、通学や通信で学習を行い、認定試験に合格すると資格を取得できます。
介護事務の職種に資格は必須ではありませんが、介護保険に関する専門知識は必要です。
未経験から介護士を目指している方は取得を考えてみてはいかがでしょうか。
3.レクレーション介護士2級
レクレーション介護士2級も取得しやすい資格で、高齢者とのコミュニケーション能力や高齢者が喜ぶレクが作れるようになります。
アイデアを企画書にして実行する力も備わるのでおすすめの資格です。
レクレーション介護士2級の資格を受験する条件
レクレーション介護士には2級と1級がありますが、2級は誰でも受講可能です。
2級を取得すると1級に挑戦できるようになります。
レクレーション介護士2級を取得するには
レクレーション介護士2級は通信講座・通学講座・団体研修の3つから取得できます。
通信・通学の金額はどちらも約35,000円です。
通信講座のユーキャンだと資格取得まで約3ヶ月で、レクレーション企画書の添削課題の提出と選択式50問の筆記試験で60点以上を取ると合格です。
通学の場合は、6時間×2日で12時間ほど学習したのち、通信と同様に添削課題と筆記試験が行われます。
団体研修は公認講師が事業所や施設に直接出向き指導してくれたのちに、試験が実施されます。
すでに勤務している方は職場に確認してみましょう。
介護士として従事している人が取得すべき資格と条件
介護士として従事しているからこそ取得できる資格や、今後のキャリアアップを考えて取得すべき資格を4つ紹介します。
- 介護福祉士実務者研修
- ガイドヘルパー
- 介護福祉士
- ケアマネージャー
4つの資格のうち介護福祉士とケアマネージャーは、一定の条件を満たさないと受験できません。
まだ介護職が未経験の方も、今後のキャリアアップを考えながら読み進め、ご自身の成長に役立ててください。
1.介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位資格で、国家資格である介護福祉士の試験を受けるには必須の資格です。
取得すると訪問介護サービス事業所で「サービス提供責任者」の役職につくことができます。
今後のキャリアアップを考えているなら、必ず取得しておくべき資格といえます。
介護福祉士実務者研修を受講する条件
介護福祉士実務者研修を受講する条件はありません。
介護職が未経験でも受けられますが、介護の基本を理解している人向けにカリキュラムが組まれています。
スクールによっては、介護職員初任者研修の資格が必要な場合もありますので確認が必要です。
介護職が未経験の場合は、介護職員初任者研修から取得するのが良いでしょう。
介護福祉士実務者研修を取得するには
対面の講義があるので通信講座だけでは受講できず、介護スクールなどに通う必要があります。
無資格からの取得だと受講科目は20科目で、講義と演習で組まれた450時間のプログラムを学習します。
資格取得までの期間はおよそ6ヶ月で、技術と知識を習得するのが目的ですので修了試験は義務化されていません。
ですがスクールによっては理解度をはかるため試験を行う場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
すでに資格を所持している場合は、資格の種類によってカリキュラム内容が変わります。
介護職員初任者研修や2013年に廃止されたホームヘルパーなどの資格を保有していると以下の時間が免除になります。
保有資格 | 免除される時間 |
介護職員初任者研修 | 130時間 |
ホームヘルパー2級(2013年廃止) | 130時間 |
ホームヘルパー1級(2013年廃止) | 355時間 |
介護職員基礎研修(2013年廃止) | 400時間 |
2.ガイドヘルパー
ガイドヘルパーは、1人で移動することが困難な方の外出をサポートできる資格です。
視覚障がい者同行援護従業者養成研修、全身障がい者ガイドヘルパー養成研修、知的・精神障がい者行動援助従業者養成研修の3つの資格があり、要件やサービス内容は各市区町村で異なります。
ガイドヘルパー研修を受講する条件
基本的には他の資格や実務経験は必要ありません。
市区町村によっては、介護職員初任者研修以上の資格保有が必須の場合があるので確認しておきましょう。
ガイドヘルパーの資格を取得するには
研修内容は市区町村によって異なるものの、東京都の場合は16時間〜20時間で取得可能な資格です。
基本的には修了試験はなく、都道府県や市町村が指定した養成研修を修了することで取得できます。
3.介護福祉士
介護福祉士は、介護職で唯一の国家資格です。
取得すると身体介護や生活援助、メンタルケアといった直接的なお手伝いから、ご家族に向けて介護方針の相談や介護用具を利用する際の指導、自宅介護の注意点やアドバイスができます。
職場ではチームリーダーとしてチームメンバーへの指導も任せてもらえます。
介護のスペシャリストとして相談される側の立場にある重要な存在です。
介護福祉士の受験資格を得るための条件
介護福祉士の受験を受けるには以下4つの条件のいずれかを満たす必要があります。
受験を受ける条件 | 名称 |
3年の実務経験+介護福祉士実務者研修の修了している | 実務経験ルート |
福祉系高校または福祉系特例高等学校を卒業している | 福祉系高校ルート |
介護福祉士養成施設を卒業している | 養成施設ルート |
3年の実務経験+介護福祉士実務者研修の修了している | EPAルート |
未経験から介護福祉士を目指すなら、実務経験ルートで受験資格を得るのが一般的です。
3年の実務経験は、正式には従業期間3年(1,095日)以上、かつ従事日時540日以上が必要条件です。
従業期間は実務経験の対象となる施設(事業所)及び職種での在職期間のことで、従事日時とは、従業期間内に実際に介護等の業務を行った日数です。
介護業務に該当しない職種をしていた場合は、従事日時にカウントされません。
働いていた期間=実務経験年数ではない場合があるため、確認しておきましょう。
2012年末で廃止された介護職員基礎研修を修了している場合は、喀痰吸引等研修(第一号または第二号研修修了、及び実地研修修了)を修了すると、介護福祉士実務者研修を修了していなくても受験可能です。
介護福祉士の資格を取得するには
介護福祉士の資格を取得するには国家試験を受ける必要がありますが、どのルートで試験を受けるかで試験内容が変わります。各ルートについて紹介します。
実務経験ルート
実務経験ルートは、筆記試験に合格すると資格を取得できます。
各施設・事業所から発行される「実務経験証明書」と「実務者研修修了証明書」の2つが必要ですので確認しておきましょう。
福祉系高校ルート
福祉系高校ルートは、入学した年度や介護技術講習を受講したかによって実技試験が免除になる場合がありますが、筆記試験は必須です。
養成施設ルート
養成施設ルートは、2017年1月までは指定の介護福祉養成施設を卒業すると介護福祉士の資格が取得できました。
現在は指定の介護福祉養成施設を卒業し、介護福祉士試験に合格する必要があります。
2017年4月1日~2027年3月31日までの卒業生には経過措置が設けられており、卒業後に登録申請すると5年間は介護福祉士資格取得者とみなされます。
卒業から5年間続けて介護等の業務を行うと資格が更新されますが、5年間継続して勤務しないと介護福祉士の筆記試験に合格しなくてはなりません。
2027年度(2027年4月1日以降)の卒業生は筆記試験が必須となる予定です。
EPAルート
EPAルートはインドネシア・フィリピン・ベトナムなど経済連携協定の国籍を持つ人のためのルートで、筆記試験と実技試験に合格する必要があります。
4.ケアマネージャー
ケアマネージャーは介護支援専門員と呼ばれ、ケアプランの作成やサービスの調整を行う介護保険のスペシャリストです。
利用者さんやそのご家族の思いを施設や事業所に伝える橋渡し役として重要な役をになっています。
他のチームメンバーへの指導や進行状況の確認を行うチームリーダーでもあります。
ケアマネージャーの受験資格を得るための条件
ケアマネージャーの受験資格は、医師、歯科医師、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士などの実務、または生活相談員、支援相談員、相談支援専門員などの相談援助業務を5年以上かつ900日以上の経験が必要です。
2018年から指定業務の種類も狭まり、より難関な受験資格が必要になりました。
ケアマネージャーの資格を取得する条件
ケアマネージャーの試験に合格しても、介護支援専門員証がないとケアマネージャーとして勤務できません。
介護支援専門員証は研修と講義や実演を受講し、居住介護支援事業所で3日間程度の実習を終えると介護支援専門員資格登録簿に登録され、介護支援専門員証が交付されます。
未経験者は条件なく受講できる資格から取得しよう
介護士の資格には、未経験でも取得できる介護職員初任者研修のような資格から、一定の条件を満たさないと受験資格が得られない介護福祉士やケアマネージャーなどの資格があります。
介護職未経験者は、誰でも受講できる介護職員初任者研修を取得して介護士として勤務しながら、実務者研修や介護福祉士を目指すとキャリアアップがスムーズです。
ひとつひとつ経験を積みながらスキルアップしていきましょう。