介護職は肉体労働が多く、きついという印象が強い職種です。
特に入浴介助は、介護経験が長い介護職員でも重労働できついと感じているため、経験年数が浅い方にとっては大きな負担感があるでしょう。
この記事では、介護職の入浴介助がきついと感じる理由と入浴介助の仕事を少しでも楽に行うための対処方法を紹介します。
慣れない入浴介助の不安を少しでも解消し、負担感を減らしたいと悩んでいる介護職員の方は、参考にしてください。
入浴介助とは?
入浴介助とは、自分で入浴するのが困難な高齢者や障がいを持った方の入浴をお手伝いする仕事です。
入浴は、身体を清潔にし、心身ともにリラックスする効果があります。
しかし、入浴介助は専門性が求められる仕事のため、経験があり知識を持つ介護職員が行う必要があります。
入浴介助の目的
入浴介助の目的は、利用者さんの体調チェックをはじめ、次のような目的があります。
- 身体を洗い、清潔にする
- 感染症や床ずれを防ぐ
- 皮膚の異常など、全身を観察できる
- 血液の循環が促進され、心身機能が高められる
- 睡眠の質を向上させる
- ストレスを解消する
入浴介助は、利用者さんの体調確認やコミュニケーションの場となる仕事といえるでしょう。
入浴介助の手順
入浴介助の手順をしっかりと理解し、利用者さんの健康状態に合うように介助する必要があります。
入浴介助は、一般的には次の手順のとおりです。
1.利用者さんの体調を確認する
(血圧が高いなど体調がすぐれない場合は、温タオルで身体を拭くなど入浴方法の変更が必要)
2.浴槽に湯張りする
3.脱衣室と浴室の温度差をなくしておく(特に冬場のヒートショック防止)
4.浴室内の床マット等転倒防止対策を確認する
5.着替え、バスタオル、ハンドタオル、ボディウォッシュを用意しておく
6.介護職用入浴介助用具(防水エプロン、滑り止め靴、手袋)
7.利用者さんに十分な水分を摂ってもらう
8.利用者さんの全身状態を確認する
なお、食事前後の入浴は体調不良の原因になる危険性があるため、注意が必要です。
食事前の入浴はめまいや貧血の原因に、食事後の入浴は消化不良などの原因になります。
入浴介助の注意点
入浴介助では、手順を事前にチェックしておき、しっかりと準備しておくことが大切です。
準備を怠れば、入浴介助中に備品を取りに戻る間、利用者さんを一人にしてしまう可能性があるため、大変危険です。
また、入浴中または入浴した後も注意すべき点があります。
■入浴中に注意すべき点
- シャワーの温度は、38~40℃に設定し使用する
- シャワーでお湯をかける際、声掛けする
- 身体に負担をかけないよう、シャワーで足元からお湯をかける
- 入浴時間は短めにする(5分程度が良い)
■入浴した後に注意すべき点
- 転倒防止のため、浴室を出れば足裏をタオルで拭く
- 利用者さんに水分を摂ってもらう
- 体調に変化がないか確認する
- 休憩させる
このように入浴介助は、利用者さんの体調管理に気を配る必要があり、介護職員の負担が大きい仕事です。
入浴介助の方法
入浴介助の方法としては、大きく分けると以下の2つに分類されます。
- 通所介護施設の入浴介助
- 訪問介護の入浴介助
それぞれ順に説明します。
通所介護施設の入浴介助
通所施設の入浴介助は、利用者さんの身体の状態によって入浴方法が変わります。
入浴方法は一般的に次の4つの種類があります。
- 一般浴・・・歩行などの移動が可能な利用者さんが普通のお風呂に入浴する方法
- 機械浴・・・利用者さんがストレッチャーに寝たまま入浴する方法
- 中間浴・・・リフト浴ともいい、リフトを利用し、浴槽に移動して入浴する方法
- シャワー浴・シャワーのみで身体を清潔にする方法で湯船に浸かれない利用者さんのための入浴の代用方法
入浴介助は入浴方法によって特徴があり、高い介護技術が必要です。
気をつけるポイントは多くありますが、介護技術が向上する仕事の1つといえるでしょう。
訪問介護の入浴介助
訪問介護の入浴介助は、介護専用の浴槽を自宅に運び、介護職員により入浴を介助するサービスです。
利用する施設に利用者さんに合った入浴設備が少ない、または自宅に浴槽がないなど、入浴できない利用者さんを支援するため、一般的には介護職員2名、看護師1名のチームで行います。
簡易浴槽を積む専用の車を使用して移動し、移動後には簡易浴槽を自宅へ運搬する作業が必要となります。
さらに、利用者さん宅への移動時間に制約があるなど、体力的にも精神的にも負担が大きい仕事です。
入浴介助がきつい理由とは?
介護職の入浴介助がつらい理由は、大きく分けると、体力的な負担、精神的な負担、精神的な苦痛の3つです。
介護施設によっては、入浴設備が異なる、利用者さんの身体の状態に応じた入浴介助が必要になるなどの理由から仕事量が変わります。
特に介護職の中でも経験が少なく、入浴介助に不慣れで、必要以上に精神的なプレッシャーを感じている場合は、相当なつらさを感じる可能性もあります。
入浴介助では利用者さんが心身ともにリラックスした状態になりますので、コミュニケーションが取りやすいというメリットもありますが、次のような場面では特に介護職員がつらさを感じるでしょう。
- 利用者さんが多いと体力がもたない
- 利用者さんの安全に気をつかう
- コロナ対応のマスク着用で呼吸がしにくい
- 利用者さんが入浴を拒否する
利用者さんが多いと体力がもたない
入浴介助が必要な利用者さんが多いと体力がもたないことがあります。
利用者さんの身体の状態や健康状態によって、入浴介助方法が異なるため、都度、利用者さんの状態をチェックし、必要であればサポート方法も変えなくてはなりません。
特に利用者さんの姿勢を維持するサポートは、足腰の負担が大きいため、介護の他の仕事よりもつらいと感じる原因になります。
また施設の利用者さんの人数によっては、入浴介助が長時間におよぶ可能性もあるため、体力的な負担はかなり大きくなります。
利用者さんの安全に気をつかう
利用者さんの安全に気をつかうこともつらさの1つの原因になります。
介護職は、少しの不注意が利用者さんの思わぬ事故につながる危険性があるため、気を抜けない仕事です。
利用者さんの安全確保を最優先することが介護職の職務です。特に入浴介助は足元が滑りやすい状況での仕事になるため、最大限の注意が必要です。
入浴介助が終わるまで利用者さんを安全に守る責任が伴います。
このように、気を抜けない時間が続くことが、つらいと感じる1つの要因であるといえます。
コロナ対応のマスク着用で呼吸がしにくい
コロナ対応のマスク着用で呼吸がしにくい状況での入浴介助は、体力の消耗が激しく、つらいと感じます。
短い時間の入浴介助であっても、マスクが浴室の湿気を含み、呼吸しにくくなるため、必要以上に体力を消耗します。
フェイスシールドを使えば、呼吸は楽になりますが、施設の対応によってはシールドが曇るなどの理由で禁止されているところもあるでしょう。
特に入浴介助の人数が多ければ、体力の消耗とともに利用者さんへの配慮が不足してしまう可能性もあります。このようなことがストレスに感じ、つらいと感じてしまう原因になることがあります。
利用者さんが入浴を拒否する
利用者さんが入浴を拒否すると、つらいと感じる原因になります。
入浴拒否の原因は利用者さんによって違いますが、主な理由としては以下の4つが挙げられます。
①人前で裸になるのが恥ずかしい
脱衣所であっても、人前で裸になるのは恥ずかしく、抵抗があります。
②今日はお風呂に入りたくない
体調がすぐれない、気分が乗らないなど、入りたくない日もあります。
③人の手を借りなくても入浴できる
自分でゆっくりと入浴したい、人の手を借りなくても入浴できるといった自尊心が強い人ほど、抵抗感が強い傾向にあります。
④入浴を理解できない
認知症の方は、お風呂を認識していないことも考えられます。今から何が起こるのかパニックになり、介護職員を困らせることもあります。
入浴介助がきついと感じた時の対処方法
入浴介助がつらいと感じた時の対処方法を紹介します。
介護職の入浴介助は重労働のため、体調維持に気をつけなければ、利用者さんの怪我につながる可能性もあります。
また、1日に多くの利用者さんと接するため、利用者さんの体調や気分によって、入浴に時間がかかることもあるでしょう。
ここでは、利用者さんを気にしながら、自分の体調も維持できる対処方法を紹介しますので参考にしてください。
水分補給を忘れない
入浴前後に利用者さんが水分補給すると同時に、介護士も十分な水分補給を忘れないことが大切です。
高温多湿な浴室では発汗に気づきにくいため、脱水症状を起こす場合もあります。
意識してこまめな水分補給を心掛けましょう。
コルセットを使用するなど腰痛を防止する
コルセットを使用するなど腰痛を防止する対策をしておきましょう。
入浴介助では利用者さんをサポートするために、足腰への負担は避けられません。
腰痛やぎっくり腰になる前に、コルセット、サポーターを使用するなど、腰の負担を極力軽減しておくとよいでしょう。
利用者さんに応じた入浴方法に見直す
入浴方法を一人一人の利用者さんに応じて見直すことも大切です。
利用者さんの体調や気分によっては、足湯だけにする、身体だけを拭くなど、入浴を控えることも必要です。
利用者さんがリラックスでき、身体を清潔に保てれば、入浴しないという対処方法に変更することも考えましょう。
介護士と利用者さんの負担を減らす入浴介助方法を考え実践しよう
入浴介助は、介護士がつらい状況でも、利用者さんの安全を優先し、体調管理しながら行う重労働の仕事です。
中でも経験の浅い介護職は、コツが分かるまでは慣れないことに疲れてしまうこともあるでしょう。
しかし、入浴介助は介護の中でも重要な位置づけとなる仕事です。
介護士と利用者さんの負担を減らす入浴介助方法を考え、極力負担を軽減するよう実践することが大切です。