介護士として働いている人の中には、無資格で働き続けているという人もいるでしょう。
しかし「このまま仕事を続けていく中で、資格は取っておいた方が良いのか」「資格を取るには、時間とお金がかかるのではないか」と疑問や悩みがあるという人もいるでしょう。
この記事では、介護士のおすすめの資格、取得方法についてお伝えしていきます。
ずっと介護士として働きたいと考えるなら、資格は必要
結論から言うと「ずっと介護士として働きたいならば、資格は必要」です。
資格を取得することで、給料アップ等のメリットがありますが、それだけではない重要な理由があります。
今後無資格者は「認知症介護基礎研修」を受けなければならない
認知症介護基礎研修とは、認知症の人への理解や対応方法を学ぶ研修です。
2024年4月から、介護施設で介護業務にあたる職員は、全員受講する義務が生じます。
それほど介護職にとって、認知症の方に対する介護の知識とスキルは重要であるといえるのです。
ただし、介護福祉士や介護職員初任者研修の資格を持っている人は、研修が免除されます。
認知症介護基礎研修は試験がなく、6時間程度の講習を受けると修了証書が発行されるので、比較的難易度の低い研修です。しかし「長く介護の仕事を続けたい」と考えるのであれば、より介護の専門的な知識が身につく資格を取得するのが良いでしょう。
介護士資格を早めに取得するメリット
介護士資格を早めに取得するメリットとしては、下記の3つがあります。
- 給料が上がる
- 転職の幅が広がる
- ケアマネジャーとしての受験要件を満たせる
それぞれどのようなメリットなのか、具体的にお伝えしていきます。
給料が上がる
まず1つめは「給料が上がる」ことです。
多くの介護施設では「資格手当」を給料に上乗せしています。
この資格手当ですが、5000円から1万円程支給されるのです。
また介護施設では、介護業務を行っている介護職員に対し「処遇改善手当」というのが支給されます。
この処遇改善手当でも、無資格者と資格を持っている人では後者の方が多く貰えます。
さらに、職場内で出世しやすくなり、給料が上がるというのも特徴としてあります。
例えば訪問介護の場合、ケアマネジャーとヘルパーの調整役を担う「サービス提供責任者(以下サ責)」という役職があります。サ責は、介護福祉士を持っていないとなることができません。
資格を持っていれば、職場内でできることが広がり、給料も上がるのです。
転職の幅が広がる
2つめは「転職の幅が広がる」ことです。
介護の仕事は無資格でも働くことはできますが、一部の病院や訪問介護等は、介護福祉士や初任者研修等の資格が求められる場合があります。
また近年では、高齢者の分野だけでなく、障がい者の施設でも介護福祉士の資格が求められることがあります。
資格を持っていれば、仕事を選ぶ選択肢が広がるのです。
ケアマネジャーとしての受験要件を満たせる
3つめは「ケアマネジャーとしての受験要件を満たせる」という点です。
ケアマネジャーになるには、国家試験の取得に加えて、資格を用いて5年以上の実務経験が必要になります。
将来ケアマネジャーとして働くことを考えている人は、介護福祉士の資格取得をおすすめします。
無資格者に必要な資格
ここまで、資格取得を早めに行うメリットについて紹介していきました。ここからは、無資格者に必要な資格についてお伝えしていきます。
必要な資格として、下記の3つがあります。
- 介護職員初任者研修
- 介護職員実務者研修
- 介護福祉士
それぞれどんな資格なのか、説明していきます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは、介護の仕事をするために必要な最低限の知識、技術、思考プロセスを身につけ、基本的な介護業務を行えるようになるための研修です。
「介護の基本」や「認知症の理解」等の10科目を130時間かけて学びます。
演習など一部科目での通学は必須ですが、土日開講や一部通信制の講座があるため、働きながら受講することは可能です。
実務者研修
実務者研修とは、介護職員初任者研修の内容に加えて、より実践的な技術と思考プロセスを学ぶ研修です。
「生活支援技術」や「医療的ケア」等20科目を約450時間かけて学びます。
介護職員初任者研修を受けた人は一部科目免除がありますが、それでも数ヶ月かけて勉強する必要があります。
介護福祉士の国家試験を受験する為には、受験要件である実務者研修を修了することが必要不可欠です。
介護福祉士を取得したいと考えている人は、まず実務者研修を受けることをおすすめします。
「介護福祉士の国家試験勉強のこともあるから、実務者研修の勉強は無駄なのではないか」と考える人もいるでしょう。
しかし実務者研修で学ぶ内容というのは、国家試験で出題される範囲の基礎となっているのです。
特に医療的ケアに関しては、座学と実技で覚えた内容が、そのまま国家試験として出されるということが多いです。
訪問介護でデイサービスで働いている人は、胃瘻や経管栄養の利用者に関わる機会というのは少ないかと思われます。
実務者研修の勉強は「国家試験の勉強の1部だ」と考えて取り組むと、モチベーションも維持できます。
介護福祉士
介護福祉士は、介護福祉系の国家資格の1つです。
無資格者が介護福祉士の受験資格を得る場合は、介護施設等で3年以上実務経験を培うのに加え、実務者研修を修了していることが条件としてあります。
夜勤前や夜勤中、休日等を使って勉強している人が多いです。
勉強が大変と感じるかもしれませんが、現場で経験していることが問題として出題されることが多く、合格率も7割と比較的高いので、少しずつ勉強していけば合格することは可能でしょう。
介護士の資格を取るにも、まとまったお金は必要
ここまで、介護の資格について紹介してきました。
資格取得をするのはメリットがありますが、資格を取得するにも、まとまったお金が必要です。
実務者研修を受講するための費用や、介護福祉士の国家試験の受験料、合格後の登録料などを含めると、15万程度は必要になります。
事業所によっては費用を負担してくれる場合もありますが、多くは自費で賄わなければなりません。
経済的負担を軽減できる制度を紹介
「資格を取得するのに、なるべく費用を抑えたい」という人の為に、負担を軽減できる制度を紹介していきます。
スクールのキャンペーンや制度を利用する
1つめは「スクールのキャンペーンや制度を利用する」ことです。
例えば土屋ケアカレッジの場合、初任者研修と実務者研修をセットで受講することで、割引されます。
また、土屋ケアカレッジの母体である「ホームケア土屋」といった関連の介護事業所へ就職すると、全額キャッシュバックされるという制度もあります。
「資格取得だけでなく、転職も考えている」という人は、スクールの制度を活用するのが良いでしょう。
教育訓練給付金制度
2つめは「教育訓練給付金制度」です。
一定期間雇用保険に加入し、ハローワークで申請することで、受講費の1部を国から給付金として受け取ることができるのです。
介護系の資格の場合「介護職員初任者研修」と「介護福祉士」が対象になります。
介護職員初任者研修の場合ですと、最大で4割給付金として戻ってきます。
介護福祉士については「専門実践教育訓練給付金制度」の対象なので、後述で説明します。
専門実践教育訓練給付金制度
専門実践教育訓練給付金制度とは、高度な知識や経験が求められる国家資格取得を対象としている給付金制度で、介護福祉士が該当します。
この制度を利用する手順を紹介します。※4月から始める場合を想定します。
- 4月中に養成校で受講料を払う。その際「専門実践教育訓練給付金制度を使う」旨を伝える。※実務者研修は、受講開始から半年以内で修了しなければならない。
- 5月中旬までに、ハローワークで「専門実践教育訓練給付金制度」の申請を行う。その際受講する養成校も記入する。
- 5月半ばから通信講座にて課題をこなしつつ、養成校にて演習を受ける。
- 9月末までに、介護福祉士国家試験の申込を行う。(実務者研修が終了していない人は、見込みの書類を送る。)
- 11月までに実務者研修を修了する。
- 修了後速やかにハローワークに申請する。申請後1週間程度で給付金の2割が支給される。
- 1月末に介護福祉士の国家試験を受験する。
- 3月末に合格したことを確認したら、4月中に登録料や不足していた書類等を申請する。(実務者研修修了証を見込みで送っていた人は、実務者研修修了証も一緒に送る。)
- 4月から5月にかけて介護福祉士の登録証が届く。
- 登録証のコピーと一緒に、ハローワークにて2回目の申請を行うと、残りの給付金(5割)が支給される。
上記の手順を行う場合、給付金をすべて貰うには、1年以上かかるのです。
また国家試験の登録料や受験料は対象とならず「実務者研修にかかった費用」のみ対象となるので、領収書等は必ず保管しておくようにしましょう。
「返還免除付き貸付金」の制度もあり
3つめは「返還免除付き貸付金」の制度です。
制度の1つとして「介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度」があります。
この制度は、介護福祉士実務者研修施設等(以下、実務者研修施設)に在学する人を対象に、受講費等最大20万円を無利子で貸付するものです。
資格取得後、2年間介護施設で働くと、返済が免除されます。
「まとまったお金がない」という人は、住んでいる都道府県の福祉人材センターに相談してみましょう。
介護士にとって、資格は必要なものであり、自分の武器になる。
今後長く介護の仕事を続けたい介護士にとって、資格は必要なものです。
また転職を考えたとき、転職の幅を広げたり、採用に有利になるための武器にもなります。
是非、資格取得を目指してみてください。