介護施設や訪問介護で働いている人の中には「認知症ケアに興味があり、認知症ケア専門士の資格を取りたい」と考えたことがあるけれど、同僚から「認知症ケア専門士を取っても、意味ない」と言われ、諦めてしまった経験がある人がいるでしょう。
この記事では、本当に認知症ケア専門士の資格は意味ないのか、メリットはあるのかといったことをお伝えしていきます。
また認知症ケア専門士の資格を取るのに向いている人も紹介しているので「自分が向いているかどうか」を判断する参考にしてください。
「認知症ケア専門士」はなぜ「意味ない」と思われがちなのか?
認知症ケア専門士の資格を取っても「意味ない」と思われる理由として、下記の2つがあります。
- 資格を取るのに、多くの時間と労力がかかる
- 「資格を取っても給料が上がらない」と思われている
次の項目で詳しく説明します。
資格を取るのに多くの時間と労力がかかる
1つめの理由は「資格を取るのに、多くの時間と労力がかかる」ことです。
つまり、認知症ケア専門士を受験するには、最短でも3年介護事業所で働く必要があります。
加えて、認知症ケア専門士を受験するには以下の準備が必要です。
- 受験の手引きの取り寄せ
- 職場に実務経験の証明書の発行依頼
- 第1次と第2次試験の受験勉強
- 第1次試験を受験するためのパソコン等端末の準備
第1次試験はWEB試験、第2次試験は論述試験となります。
提出日までに課題に対する小論文を作成し、提出する必要があります。
日々の業務が忙しいと、帰宅後や休日に課題に取り組む余裕がないという人もいるでしょう。
また、小論文ですのでただ文章を書けば良いという訳ではありません。
「端的に分かりやすく伝えることができるか」といった文章構成能力が求められるので、人によっては難しいと感じる方もいます。
さらに、パソコンがない人は端末の準備やネット環境の整備も必要です。
普段からパソコンに触る機会のない人は、使い方から覚えなければなりません。
このように、多くの時間と労力を考えると、資格を取ることを遠慮する人もいるでしょう。
「資格を取っても給料が上がらない」と思われている
2つめは「資格を取っても給料が上がらないと思われている」ことが理由です。
介護福祉士のような「国家資格」ではなく「民間資格」ですので「国家資格ではないから、認知症ケア専門士の資格を取っても給料は上がらないのではないか」と考える人もいます。
認知症ケア専門士を取ることでメリットはあるのか
ここまで、認知症ケア専門士の資格を取っても意味ないと思われがちな理由についてお伝えしてきました。
では、本当に資格を取っても意味がないのでしょうか。
結論としては「意味があり、メリットがある」と言えます。
その理由として、下記3つが挙げられます。
- 認知症のある人への対応がより良くなる
- 職場から重宝される
- 転職の幅が広がる
次にて詳細に説明します。
認知症のある人への対応がより良くなる
1つめは「認知症のある人への対応がより良くなる」です。
介護職員の中には「認知症のある人への対応が分からない」「自分の仕事を邪魔されるのが嫌で、認知症対応をしたくない」という人がいます。
そのような人は「同じ話を何回もしてくる」「夜中に徘徊する」といった入居者さんや利用者さんに対して「さっきも言ったでしょ」と強い口調で言ったり「動かないで、座ってて」と行動を制限したりすることも。
そのため、同じ場面に遭遇しても次のような対応を取れるようになります。
- 相手の話を傾聴する
- 皿拭きや掃除等、家事活動を提供して違うことに注意を向ける
- 夜勤中徘徊がある人は巡視時一緒に回る。相手に「夜なので暗いこと」「他入居者や利用者も寝ているので、誰も起きていないこと」を認識させ、自然と部屋へ戻るよう誘導する
職場から重宝される
2つめは「職場から重宝される」ことです。
「認知症ケア専門士の資格を取っても、給料が上がらないと思われている」ということを説明しました。
しかし実際は、認知症ケア専門士の資格を持っていると事業所にとって利益になるのです。
2021年度から、介護保険制度の加算に「認知症専門ケア加算」が追加されました。
認知症専門ケア加算とは「認知症に関する専門的な研修を修了した職員を配置し、認知症の利用者を受け入れ、会議や研修等で認知症ケアを積極的に取り組んでいることを評価する加算」のことです。
そのため資格を持っている職員は職場から重宝され、給料も上がりやすくなります。
転職の幅が広がる
3つめは「転職の幅が広がる」です。
そのため、認知症ケア専門士の資格を持っていれば、特養などの施設介護だけでなく、訪問介護や地域包括支援センターといった在宅介護の事業所にも転職できます。
認知症ケア専門士を取るのに向いている人
ここまで、認知症ケア専門士のメリットについてお伝えしてきました。
では、どんな人が資格を取るのに向いているでしょうか。
認知症ケア専門士を取るのに向いている人は、下記2つです。
- 認知症ケアに興味がある人
- 認知症の入居者や利用者に、より良い生活を送ってもらいたいと考えることができる人
詳しく説明していきます。
認知症ケアに興味がある人
1つめは「認知症ケアに興味がある人」です。
どんな資格でも言えることですが、興味がないと知識やスキルは身につきません。
「職場に言われて仕方なく取る」と考えていては、知識は身につきませんし、資格を取得したとしても介護現場で活かされることは少ないです。
「認知症ケアって、どんな方法があるのだろう」という純粋な興味を持っている人は、勉強を続けやすいです。
認知症の入居者や利用者に、より良い生活を送ってもらいたいと考えることができる人
2つめは「認知症の入居者や利用者に、より良い生活を送ってもらいたいと考えることができる人」です。
認知症を持っている人は、日々の生活を送るのに多くの不安と障害を抱えています。
本人だけでなく、認知症の親を介護し、心身共に疲弊しているという家族もいます。
さらに、夫婦2人で住んでいるけれどどちらも認知症を患っており、困難を抱えながらも何とか生活しているという場合もあります。
本人や家族からの訴えを聴き「認知症による○○の問題を解決するには、どうすれば良いか」「その為に何が必要か」を根拠を持って考えるスキルがあります。
また、根拠をもとに具体的な支援を提供することができるので、本人や他者だけでなく他職種にも説明する力が身につきます。
「より良い生活を送ってもらいたい」という想いがあれば、自然と本人や家族にとって何が良いのかを考えることができるようになるのです。
認知症ケア専門士は、これからの超高齢化社会を支えるのに必要な資格
認知症ケア専門士は多くの時間と労力が必要なので、取得しても意味ないと思われがちです。
しかし、認知症ケアに関する知識やスキルを持っていることで、認知症を患っている入居者さんや利用者さんに対し、より良いケアを提供できます。
また、資格を持っている職員がいる事業所に対し認知症ケア加算が追加されるなど、認知症ケアできる人材の需要は高まっています。
認知症ケアに興味がある人、認知症を持っていてもより良い生活を送って送ってもらいたいと考えている人は、是非資格取得を目指してみてください。