日本の高齢社会を支えるために、介護の仕事の需要は高まる一方です。
しかしながら、介護の仕事といっても「介護福祉士」や「介護職員」などいろいろな名称を目にしますが、その違いがわからないという方も多いでしょう。
そこで「介護福祉士」と「介護職員」について仕事内容や待遇の違い、また介護福祉士の資格取得についてわかりやすく解説していきます。
介護福祉士と介護職員の違いとは?
「介護福祉士」も「介護職員」も介護の仕事に従事する人という意味では同じです。
しかし、介護福祉士と介護職員は資格の有無という点で大きな違いがあります。
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格です。
「介護職員(介護士やケアスタッフなど働く施設や会社により様々な名称がある)」とは、介護の仕事に従事している人全般を指す総称であり、資格の名称ではありません。資格がなくても介護職員として働けるのです。
一方「介護福祉士」とは介護福祉士国家試験に合格し、国家資格を取得した人だけが名乗ることができます。
したがって、介護福祉士と名乗ることができる介護職員は、知識と実務を兼ね備えた介護のプロであり、介護業務だけではなく職員の教育やマネジメントも担う重要な介護人材といえます。
資格の有無で業務内容に差がある?
介護福祉士はより知識や経験が必要な業務を任されることが多く、そのため業務内容に差が出ることも多いです。
加えて、現場のリーダーやマネジメント職へのキャリアアップには、介護福祉士の資格保有が条件となる場合が多いため、介護福祉士の資格がない介護職員よりもキャリアアップが望め、仕事の選択肢も広がります。
介護職員も介護福祉士も介護施設や訪問介護事業所などに勤務し、介護が必要な高齢者や障がい者に排泄、入浴、食事などの日常生活の支援を行います。よって、介護をする点は同じであるといえるでしょう。
待遇面の差はある?
介護福祉士の資格保有者は、介護福祉士の資格がない職員よりも基本給が高く設定されている場合や、資格手当が支給される場合が多いので、待遇面で差が出ることが多くあります。
厚生労働省によると、介護福祉士のひと月あたりの資格手当の平均は10,802円です。
働く施設や事業所によっても大きく異なりますが、ひと月に5,000円前後の資格手当が支給される職場が多いようです。
また、介護職全体の平均給与は315,850円ですが、介護福祉士資格保有者は329,250円、無資格者は275,920円です。
また、教育担当やリーダー、マネジメント職へキャリアアップしていけば、役職手当も支給されてさらに年収アップが期待できるでしょう。
介護福祉士の資格を持ちながらも、今の職場でキャリアアップが望めない、昇給も望めない、資格の有無で待遇に差がない等の悩みがある場合、より良い待遇や職場環境を求めて転職するのもひとつの方法です。
転職を考えた場合、経験豊富で知識もある介護福祉士を求めている施設や事業所は数多くありますので、転職活動を有利に進められるでしょう。
介護福祉士になるには?
介護福祉士の資格取得には3つの方法があります。
- 養成施設ルート
- 福祉系高校ルート
- 実務経験ルート
どのルートでも国家試験受験資格を満たして国家試験を受け、合格しなければなりません。
(もうひとつEPAルートもありますが、経済連携協定に基づきフィリピン、インドネシア、ベトナムの方が研修を受けながら就労して受験資格を得るルートですので今回は割愛します。)
養成施設ルート
大学や専門学校などで必要なカリキュラムを修了すれば、国家試験を受験する資格が得られます。
国家試験では実技試験が免除になるので、筆記試験に合格すれば介護福祉士の資格を取得できます。
福祉系高校ルート
福祉系高校を卒業すれば国家試験を受験する資格が得られます。
平成20年度以前に入学した場合は筆記試験と実技試験両方に合格する必要があり、平成21年度以降に入学した場合は筆記試験のみとなります。
特例高校では卒業後に9か月間の実務経験を積んでから筆記試験と実技試験に合格する必要があります。カリキュラムによっては実技試験が免除になる場合もあります。
実務経験ルート
対象の施設等で実務経験を3年積み、介護福祉士実務者研修を修了することで国家試験を受験する資格が得られます。
実務経験ルートでは実技試験は免除となり、筆記試験のみです。
実務経験3年とは「実務経験の対象となる施設(事業)及び職種での従業期間が3年(1095日)以上、かつ従事日数540日以上」と定められています。
従業期間と従事日数が別に設定されているのは、例えば相談員が行う相談業務等は実務経験には含まれないためです。
介護福祉士受験に必須の実務者研修とは
実務者研修は、実務経験ルートで介護福祉士国家試験を受験する方には必要な要件です。
実務者研修は経歴や学歴関係なく誰でも受講可能です。しかし、無資格から実務者研修を修了するには450時間のカリキュラムがあり、約6か月にわたり研修や課題をこなす必要があります。
働きながら受講する場合は職場の理解があること、ご自身のスケジュール管理や計画性が必要です。
実務者研修には450時間ものカリキュラムがありますが、実務者研修を受講する前に保有している資格や修了している研修があると免除される科目があります。
そのため段階的に研修を受けながら実務経験を積んで、介護福祉士試験を目指すこともできます。
保有資格と履修するカリキュラムの時間数を紹介するので参考にしてください。
- 介護職員初任者研修を修了している場合は、320時間のカリキュラム
- 旧ホームヘルパー1級を持っている場合は免除される科目が多く、95時間のカリキュラム
- 旧ホームヘルパー2級は現在の介護職員初任者研修に相当するので、介護職員初任者研修修了者と同じく320時間のカリキュラム
- 介護職員基礎研修を修了している場合は喀痰吸引等研修が必要、喀痰吸引等研修は50時間のカリキュラムと演習
※ホームヘルパー、介護職員基礎研修は2013年で廃止されたので、現在の実務経験ルートは「介護職員初任者研修⇒実務経験3年+実務者研修⇒介護福祉士国家試験受験」という方が多いようです。
介護福祉士は介護のプロフェッショナル
本記事では、介護福祉士と介護職員の違いについて解説しました。
介護の仕事をしていく上で、介護福祉士は介護のプロとして自信を持って仕事をするために、またキャリアアップや仕事の選択肢を広げるためにも必須の資格といえます。
介護の仕事はもちろん大変な仕事ではありますが、それ以上にやりがいもあります。
不規則な勤務や業種によっては夜勤もある中で、勉強を続けて資格を取得するのは並大抵の努力ではできないでしょう。
しかし、介護福祉士という国家資格を取得し知識を身につけ経験を積んでいけば、より良い介護を実践でき、さらなるやりがいにもつながります。
介護福祉士として介護の現場で活躍すれば、日本の高齢社会を支えるプロフェッショナルとして、多くの社会貢献ができるでしょう。