最近介護業界では、ケアマネージャーについての話題が多く「AIによるケアプランの作成」や「ケアプランの有料化」など、多くの人がさまざまな意見を交わしています。
ケアマネを取り巻く環境の変化を感じ取り「ケアマネ資格に将来性はあるのだろうか」と不安に思っている人もいるのではないでしょうか。
本記事では今話題となっている「AIによるケアプランの作成」と「ケアプランの有料化」について検証し、ケアマネ資格の将来性について考えます。
またケアマネの仕事が今後どのように変っていくのか、どのようなケアマネが求められるのかについても取り上げます。
ケアマネの将来性が不安で資格取得を迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
ケアマネージャーの需要はなくならない
ケアマネの将来が見通せない中でも、はっきりと言えることがあります。
それは「今後もケアマネは社会から必要とされる存在であり、ケアマネの需要はなくならない」ということです。
はじめて介護生活に入る利用者さんやご家族は、介護保険や介護サービスについて知識を持たない人がほとんどです。
不安や心配事を受け止め、適切な介護サービスが受けられるよう親身になって考えてくれるケアマネは、なくてはならない存在です。
高齢化がさらに進む中で、豊富な介護知識と高いスキルをもったケアマネは、今まで以上に必要とされるでしょう。
AIの活用で変わるケアマネージャーの将来性
「ケアプランの作成にAIを活用すべき」という背景には、厚生労働省が問題視していることがあります。
- ケアマネの業務負担が大きい
- ケアプランの内容にバラつきがある
この2つの問題を解決するためにはAIの活用が必須であると厚生労働省は考えています。
どういうことなのか具体的に解説します。
ケアマネの業務負担が大きい
ケアマネの仕事は多岐にわたり、業務量の多さが問題視されています。
作成する書類が多く、ケアマネの大きな負担となっています。
ケアプランも作成すべき書類のひとつです。
ケアプランとは、ケアマネが利用者さん一人ひとりに作成する介護計画書です。
利用者さんやご家族から希望を聞き取り、ケアマネの知識と経験から必要な介護サービスを決めていきます。
ケアプランの作成は、ケアマネの肝ともいえる重要な仕事です。
「そんな大事な仕事をAIにやらせるなんてけしからん」
そんな声が聞こえてきそうです。
しかし何もAIに仕事を取られるわけではありません。
厚生労働省はAIを「ケアマネを助ける道具」として捉えています。
AIにできるのは過去の膨大なデータから情報を取り出すことです。
「このようなケースにはこのようなサービスが過去に提供されています」とAIが提示してくれます。
実際に利用者さんと対面し状況をよく理解しているケアマネだからこそ、最終的な判断ができるのです。
ケアプランの内容にバラつきがある
作成する人によってケアプランの内容に多少の差が生じてしまうのは、仕方のないことです。
しかし、まだ経験の浅いケアマネとベテランのケアマネで作成されたケアプランの内容に大きな違いがあるとしたら、これは見逃せない問題です。
AIを活用することで、過去に多くのケアマネが作成したケアプラン内容を知ることができます。
経験の浅いケアマネでも、ベテランケアマネの仕事をAIから学ぶことができるのです。
また参考となるケアプランの文例も教えてくれるので、ケアプランにどのように書くべきか分からない人や文章を書くのが苦手な人には大きな助けとなるでしょう。
AI活用で求められるケアマネのスキル
AIを活用することでケアプランの業務負担が軽減され、ケアプランの質の向上と平均化を図ることができます。
ケアマネにとっても利用者さんにとってもメリットがあります。
しかしその一方で、AIにはできないコミュニケーションスキルが今まで以上に求められることになります。
「ケアマネの仕事=書類作成」であると勘違いしているケアマネは、将来仕事を続けていくことが難しくなるかもしれません。
また、ケアマネにもAIを使いこなすITスキルが求められます。
せっかくのAIも適切なパソコン操作ができなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。
ケアプラン有料化で変わるケアマネージャーの将来性
現在ケアマジメントについては、利用者負担がなく無料でケアプランを作成してもらうことができます。
利用者負担をとらない理由は、要介護者に積極的にサービスを利用してもらうためとケアマネの公正中立な立場を守るためとされています。
しかし介護保険がはじまって20年以上経った今、「ケアプランを有料化すべき」という議論が始まっています。
【ケアプラン有料化の理由①】社会保障費の増大
ケアプラン有料化の一番の理由として、社会保障費が増大していることが挙げられます。
少子高齢化が進み介護保険給付の支出は増える一方ですが介護保険料の収入は減っています。
介護保険料は年々上がっており、無料のケアプランについても有料化すべきという声が上がり、財務省が積極的な姿勢をみせています。
令和4年4月13日に開催された財政制度分科会の中で、財務省はケアプランの有料化について「利用者負担を導入することは当然である」という考えを示しています。
【ケアプラン有料化の理由②】サービスの定着化
介護保険制度が導入された当初は、要介護者に積極的にサービスを利用してもらいたいという理由から、ケアプランを無料にしていました。
しかしサービス利用が定着化された今、財務省はケアプラン作成料だけを無料にする理由がなくなったという見解を示しています。
【ケアプラン有料化の理由③】ケアマネの公正中立性の揺らぎ
財務省は「ケアマネの公正中立性」についても疑問を呈しています。
ケアマネ事務所の9割が介護サービス事務所に併設しており、ケアマネがケアプランを作成する際、自法人のサービスを利用するよう、上司などから圧力を受けることがあると指摘。
またインフォーマルサービスだけの利用ではケアマネの報酬が発生しないため、必要のない福祉用具貸与をケアプランに組み込むケアマネが一定数いるという実態も明らかにしています。
ケアプランを有料化し利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みを作り、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上につなげたいと考えているのです。
ケアプラン有料化で求められるケアマネの資質
ケアプラン有料化について、財務省が具体的で踏み込んだ言及をしていることから、その本気度がうかがえます。
2024年度の介護保険制度改定では、ケアプラン有料化は見送られましたが、かなり現実味を帯びてきたといえるでしょう。
ケアプランの内容に関心を持ち、サービスの必要性についてしっかり考えるようになるでしょう。
悩みを共有し、利用者さんの立場になって考える利用者ファーストの姿勢がより重要になります。
ケアマネージャー資格に将来性はある!
近い将来、介護保険利用者はさらに増え、ケアマネの需要はますます高まります。
その一方でケアマネの仕事ぶりについては、厳しい目が向けられることが予想されます。
自分本位のケアプランを作成したり、モニタリングをスタンプラリーのように考えているケアマネは淘汰されていくでしょう。
反対に親身になって利用者さんに寄り添い、有益な情報を提供できるケアマネは将来大きく活躍できます。
ケアマネ資格は「真剣にケアマネの仕事に向き合いたい」と考える人にとって、将来性のある資格であるといえます。