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認知症は遺伝するのか?遺伝子検査を受けるメリットとデメリットについて

認知症を発症する要因として、生活習慣や加齢が大きく影響していることは、広く知られています。

しかし認知症と遺伝の関係については、ほとんどの人が知らないのではないでしょうか。

自分の親が認知症になり、人間らしさが失われていくのを目の当たりにして、自分も将来こうなるのではないかと不安になる人は少なくありません。

今回は、遺伝が認知症にどのように関係しているのかについて分りやすく解説します。

併せて遺伝子検査を受けるメリットとデメリットについても深く掘り下げて考えます。
認知症と遺伝についてはプライバシーに深く関わることなので、一人で思い悩むことがあるかもしれません。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。

目次

【家族性と孤発性】2つのアルツハイマー病の特徴

家族性と孤独性 アルツハイマー病の特徴

一般的に「アルツハイマー型認知症」と一括りにされていますが、実は「家族性アルツハイマー型認知症」「孤発性アルツハイマー型認知症」の2種類に分かれます。

それぞれどういった違いがあるのでしょうか。

家族性アルツハイマー型認知症孤発性アルツハイマー型認知症
発症時期おもに40代~50代おもに70代~
進行速度速いゆっくり
割  合全アルツハイマー病の1%全アルツハイマー病の約9割
遺  伝遺伝の影響がある遺伝の影響がない

家族性アルツハイマー病と遺伝

家族性アルツハイマー型認知症は、特定の遺伝子が変異することで発症します。

40代から50代という若い時期に発症するのが特徴で、遺伝による直接的な影響が強いと考えられています。

両親のうち一人が家族性アルツハイマー病になった場合、その子どもが将来発症する確率は50%です。

ただ家族性アルツハイマー病は非常にまれなケースのため、ほとんどの人にはあまり関係がありません。

孤発性アルツハイマー病と遺伝

孤発性アルツハイマー型認知症は、遺伝による直接的な影響はないとされています。

ただ誰もが持っているAPOEという遺伝子の型によって、アルツハイマー病の発症リスクに差があります。

遺伝子型は親から子どもに受け継がれることもあります。

孤発性アルツハイマー病の場合でも遺伝の影響がまったくないとは言えません。

APOE遺伝子型から分かる発症リスク

APOE遺伝子型 発症リスク

アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβペプチドがたまり、神経細胞にダメージを与えることで発症します。

アミロイドβペプチドが脳にたまるのは、脂質を運ぶアポリポタンパク質Eが影響しています。
APOE遺伝子はこのアポリポタンパク質Eを形成するDNAです。

APOE遺伝子は、ε2,ε3,ε4 の3つの種類があり、ε2▶ε3▶ε4の順番で発症リスクが高くなります。

3つの種類のうち2つを組み合わせて1つの遺伝子型を作るので、6通りの組み合わせがあります。

【遺伝子型でみるアルツハイマー型認知症発症リスク】

遺伝子型発症リスク日本人全体に対する割合
APOE ε4/ε4型高い(8.9~15.4倍)1%
APOE ε4/ε3型高い(2.9~3.5倍)21%
APOE ε4/ε2型高い(2.9~3.5倍)5%
APOE ε3/ε3型標準(1.0倍)60%
APOE ε3/ε2型低い(0.5~0.8倍)12%
APOE ε2/ε2型低い(データなし)1%

標準の「APOE ε3/ε3型」の発症リスクを1とした場合、 ε4を1つ有する「APOE ε4/ε3型」や「APOE ε4/ε2型」では約3倍、ε4を2つ有した「APOE ε4/ε4型」だと約12倍にまで発症リスクが高まります。

しかし発症リスクが最も高い「APOE ε4/ε4型」の人口比率は最も低く、日本人の1%となっています。

アルツハイマー病の遺伝子検査内容

アルツハイマー病 遺伝子検査内容

代表的なアルツハイマー病の遺伝子検査は以下の2つです。

それぞれの検査内容や検査の問題点について解説します。

代表的なアルツハイマー病の遺伝子検査
  • 家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
  • APOE遺伝子検査

家族性アルツハイマー病の遺伝子診断

家族性アルツハイマー病の遺伝子診断は、血液を採取し特定の3種類のタンパク質を形成する遺伝子に変異がないかを調べます。

先進医療技術を使用した遺伝子検査です。

費用は自費で3万円~6万円です。

この家族性アルツハイマー病の遺伝子検査について、多くの有識者が「まだ発症していない人に行うのは慎重であるべきだ」と主張しています。

順天堂大学では「未発症の人には遺伝子診断を行わない」とはっきり示しています。
その理由は「遺伝子に変異がある」という結果が出ても、発症を予防するような有効な手だてがまだ見つかっていないからです。

発症のリスクが分かっても確実な治療法がないのでは意味がありません。

いたずらに不安を募らせるだけなら、遺伝子検査は行わない方がよいという判断です。

遺伝子診断が発症の予防や病の進行抑制に役に立つためには、根治できる薬の開発を待たないといけません。

APOE遺伝子検査

APOE遺伝子検査では、血液を採取しAPOE遺伝子の型を調べ、認知症の発症リスクを判断します。

費用は自費で1万円台後半から3万円です。

検査結果が出るまで2週間ほどかかります。

ここで注意しなければならないのは、孤発性アルツハイマー病は遺伝子以外にも要因があるということです。
さまざまな要因が複雑に絡み合って発症するケースが多いのです。

遺伝子要因は、数ある要因の中の一つに過ぎないのです。

APOE遺伝子検査で高リスクという結果が出ても、食生活に気をつけ健康的な生活を送ることで発症リスクは低くなります。逆に低リスクでも悪い生活習慣を続ければ、発症リスクは高まります。

またアルツハイマー病と深い関係がある高血圧や糖尿病も遺伝の影響を受けやすい病気です。

APOE遺伝子の他にも間接的に遺伝が影響していることもあるのです。

遺伝子検査を受けるメリットとデメリット

遺伝子検査 受けるメリットとデメリット

遺伝子検査を受けるべきかどうかは悩むところです。

「知りたい」という気持ちと「知りたくない」という気持ちがせめぎ合い、なかなか決断するのが難しいのではないでしょうか。
その人の性格によっても検査を受けるべきかどうかの判断は分かれます。

では遺伝子検査を受けることによって、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

遺伝子検査を受けるメリット
  • 結果が出るのでモヤモヤした気持ちがなくなる
  • 生活習慣を見直すきっかけになる
  • 早期発見につながる
遺伝子検査を受けるデメリット
  • 結果によっては落ち込むことがある
  • 検査結果の影響を受けすぎる
  • 費用がかかる

メリットとデメリットは、違うことを言っているようで実は同じことの裏返しであることが多いものです。

まず検査結果がはっきり示されることでモヤモヤした気持ちはなくなります。
その反面、自分が望む結果ではなかった場合、受け止められず落ち込んでしまうこともあります。
また仮に自分が望んだ結果だったとしても、その検査結果に安心して悪い生活習慣を直そうとしないかもしれません。

検査結果は明確な形で表れるので、インパクトが強く「遺伝子が要因だ」と思われがちです。
しかしアルツハイマー型認知症の場合、遺伝以外の要因も大きく関わっています。
とはいえ、遺伝以外の要因は明確な形では表れないため、検査結果に意識が強くひっぱられてしまいます。

遺伝子検査は参考程度にして予防に努めよう

遺伝子検査は参考程度に 予防に努める

特定の遺伝子がアルツハイマー病の発症に関係していることは事実ですが、遺伝子がすべてではないと考えることが大切です。

もし「アルツハイマー型認知症は遺伝以外に要因がある」と考えられないなら、遺伝子検査は受けない方がよいでしょう。

なぜかというと、記事で紹介したデメリットに大きく当てはまるからです。

アルツハイマー型認知症は予防と定期的な検査をこころがけることが大切です。

具体的には、適度な運動と良質な睡眠、バランスの取れた食事、悪い生活習慣を見直すことが大事です。

また加齢は大きな要因ですが、加齢は防ぎようがありません。

「認知症になったらどうしよう」と思い悩むより「認知症になったらなったとき」と腹をくくって毎日を楽しく過ごすことが、一番の予防になるかもしれません。

参考)
家族性アルツハイマー病の人及びその家族に対する支援体制に関する調査研究事業(公立大学法人 大阪市立大学)

この記事を書いた人

ふくしこみゅ編集部
今後ますます需要が高まる「介護職」。すでに介護職の方にも、これから介護職になりたい方にも役立つ情報をたくさん発信しています。
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この記事を監修した人

医療と経済の架け橋である「医療経済学」を研究。テクノロジーとアイデアでヘルスケア関連の問題を解決すべく情報発信を行う。医療・介護サービスのDX化推進に向けたコンサルテーション事業に従事。

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