現在、看護師・保健師で認知症ケア専門士を目指したいと考えているのではないでしょうか。
認知症の方をケアやサポートすることは簡単ではないため、深く認知症という病気を理解するために認知症ケア専門士を取得する方も少なくありません。
本記事では、看護師や保健師として働いている方が資格取得を目指す方法、注意点とともに、資格の種類について解説いたします。
認知症ケア専門士とは
「認知症ケア専門士」は、多種にわたる介護関連の資格の一つで、民間資格に該当します。
一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格で、認知症介護に携わる介護職員の自己研鑽や生涯学習の機会を設けることを目的としています。
認知症ケア専門士は資格の有効期限は5年と決まっており、5年に1回更新するタイプの資格です。
認知症ケア専門士は、認知症本人やその家族に対して高い知識と技能を用いたサービス提供ができ、国の保険や福祉に大きく貢献できることが期待できます。
介護系のなかでも認知症ケアのスペシャリストであり、非常に専門性が高いため試験の内容も深く、難易度は合格率50%前後とやや高めです。
役割
認知症ケア専門士は、認知症に対する専門的な知識とケア技術を身につけ、認知症の専門家として認知症本人や家族、そして介護に携わる職員をサポートするのが役割です。
いわゆる、認知症ケアの「縁の下の力持ち」的な存在です。
具体的には、介護現場で認知症の方へのケア方法につまづき、適切な支援が難しいケースにおいて、適切な支援方法を考えてアドバイスや指導を行ったり、ケアを実践したりします。
認知症の症状は十人十色かつ日によって異なるため、マニュアル作成で対応できるものではありません。
また、進行していく疾患であることに加えて未解明な疾患であるため、専門的な知識を深めていくことは、適切なケアを行う上で非常に重要です。
現在、認知症を発症する確率は「5人に1人」ともいわれており、超高齢化社会が進むとされるこの先の日本では、さらにニーズは高まっていくと予測されます。
活躍できる場所
認知症ケア専門士が活躍できる場所は以下のようなところがあります。
- 認知症対応型共同生活介護施設
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- デイサービス
- ショートステイ
- デイケア
- 介護付き有料老人ホーム
- 居宅介護支援事業所
- 訪問介護事業所
- 訪問看護ステーション
- 医療機関
- 地域包括支援センター
- 各市町村の福祉課
- 認知症疾患医療センター
- 訪問リハビリテーション
- 通所リハビリステーション
認知症は比較的高齢者が発症しやすい疾患ですが、若年生の認知症で30代くらいから発症するケースもあります。
よって、高齢者が利用する施設を中心に、地域包括支援センターや各市町村の福祉課、医療機関などでも就職可能です。
活躍できる職場が多いため、資格取得後、これまで働いていた職場でキャリアアップを目指す方と、さらに専門的なケアを提供している職場に転職してキャリアアップを目指す方がいます。
認知症ケア専門士の資格種類
認知症ケア専門士に関連する資格は、全3種類あります。
- 認知症ケア専門士
- 認知症ケア上級専門士
- 認知症ケア准専門士
以降では、まだ解説していない上級専門士と准専門士について解説していきます。
認知症ケア上級専門士
認知症ケア上級専門士は、2009年度にケアチームのリーダーや地域のアドバイザーとして活躍する人材育成を目的に創設された民間資格です。
専門家としての倫理観の理解や認知症ケアの方法を、経験や科学的エビデンスに基づき説明できる能力を必要とします。
さらに、ケアマネジメントやチープアプローチにおけるケアも、自己経験と科学的エビデンスに基づいて実践できるスキルが求められます。
資格の有効期限は5年です。
認知症ケア准専門士
認知症ケア准専門士は、2022年3月31日までに満18歳以上に達せば、実務としての認知症のケア経験がない方でも取得できる初級編の資格です。
誰もが認知症という疾患を身近に感じ、向き合う環境を整えることで質の高いケアができる人材を作り出すことを目的としています。
資格の有効期限は5年です。
認知症ケア専門士の資格取得をする際の注意点
認知症ケア専門士の資格を取得する前に、3点知っておいたほうが良いことがあります。
5年ごとに更新が必要
認知症ケア専門士・上級専門士・准専門士は、5年ごとの更新が義務化されています。
医療は日々進歩し、また社会環境は年々変化していくため、医療や社会環境の変化に伴って適切なケアを行えるように更新制度を設けています。
とくに医療面においては、認知症の改善や進行の抑制のための研究がされており、アルツハイマーの初期段階で服用することで効果がみられる新薬も登場しています。
認知症の発症メカニズムも研究されており、最近では複数の発症要因が考えられ、生活習慣病の一つとして数えられるようになりました。
このように、認知症の知識が年数を重ねるにつれて変わっていったり新薬が登場したりするため、認知症ケアのプロとして最新情報を把握するために更新は必要です。
更新にはコストがかかる
認知症ケア専門士・上級専門士・准専門士の更新は、コストと時間もかかることを知っておきましょう。
更新申請は手数料として10,000円かかるほか、期限が切れる5年のあいだに講座の受講や論文投稿などを行い、30単位以上の専門士単位を取らなければなりません。
更新保留申請を行えば1年間延長できますが、単位取得ができなかったり延長申請をしなかったりすると資格は喪失します。
認知症専門ケア加算の対象外
認知症ケア専門士は、個人で設立した施設や事業所では評価されやすい資格ですが、配置義務や認知症専門ケア加算はありません。
認知症専門ケア加算は、国が定め各自治体が実施している「認知症介護実践者研修」を取得することで算定できます。
認知症介護実践者研修は認定試験がなく、カリキュラムを全修了することで取得できます。
看護師・保健師が認知症ケア専門士の資格を取得する方法
看護師・保健師が認知症ケア専門士の資格を取得するための方法をご紹介します。
以降では、受検資格、試験合格後の動きをお伝えしています。
受験資格
看護師、保健師で現在働いている方は、認知症ケアに関する業務を行っていることが前提です。
さらに、試験実施年の3月31日を含め過去10年間で、3年以上の実務経験を積んでいなければ受験することはできません。
また、看護師や保健師で認知症ケアの業務にあたっていたとしても、ボランティアは実務経験として数えられないため注意が必要です。
試験合格後登録申請を提出する
認定試験に合格して自動的に取得できる資格ではありません。
合格であることがわかり次第、所定の書類を提出して登録申請を行う必要があります。
なお、申請料として15,000円かかります。
看護師・保健師が認知症ケア専門士の資格取得するための勉強方法
看護師や保健師が認知症ケア専門士の資格取得するための勉強方法は、以下の3つがあります。
- テキストとノートで勉強する
- 問題集を解く
- 対策講座を受講する
テキストとノートで勉強する
認知症ケア学会から購入できるテキストを活用して勉強する方法があります。
第一次試験は「認知症ケア標準テキスト」の第1巻〜4巻、第二次試験は第5巻までが出題範囲であるため、大いに役立つでしょう。
テキストは、認知症ケア学会の公式サイトから購入可能です。
問題集を解く
認知症ケア学会公式の問題集や過去問題集はありませんが、市販では購入できます。
テキストの読み込みに加えて問題集を数多く解くことで記憶されやすくなり、解ける問題を増やしていけます。
試験を解く状況に近い状態で覚えられるのも、記憶されやすい理由の一つです。
対策講座を受講
認知症ケア学会が公式的に開催している対策講座を受けるのもおすすめです。
受講料は15,000円かかりますが、オンラインでテキスト内の要点を効率的に学びながら模擬試験も受けられるため、勉強が捗るでしょう。
看護師・保健師の取得方法のまとめ
看護師や保健師として働いている方は、ボランティア以外で認知症のケアに関わる実務経験を3年以上積むと受験資格を得られます。
そして、認定試験に合格して登録申請を行うと、晴れて認知症ケア専門士の資格を取得できます。
資格を取得して終わりではなく、5年に1回更新が必要ですので、忘れないように気をつけましょう。