「やっぱり介護士は認知症ケア専門士を取得したほうがいい?」
「介護士が認知症ケア専門士を取得するメリットは?」
「介護士の場合どんな感じで取得するの?」
介護士は認知症を患った方と触れ合う機会が多いため、認知症ケアのプロフェッショナルである認知症ケア専門士を取得するべきなのか悩んでいる方も少なくありません。
本記事では介護士は認知症専門士を取得するべきかの結論、メリット、取得方法について解説いたします。
介護士は認知症ケア専門士を取得するべき?
認知症ケア専門士をわざわざ取得する意味はあるのか、疑問に思ったり取得しようか悩んでいる方もいるでしょう。
結論からお伝えすると、認知症の利用者さんと関わるなら取得しても損はありません。
認知症の利用者さんの対応は、どれだけベテランの介護士でも非常に難しいです。
というのも、認知症の症状の強さや種類は日によって異なるため、個人レベルでマニュアルを作成して対応することができないためです。
また、利用者さんによっては攻撃的な症状があらわれるケースや、排泄物を手渡ししてくるケースなどもあり、どのように対応すればいいのか困惑する場面も多々あります。
認知症ケア専門士は、資格取得を目指すなかでさまざまな事例を学んだり、認知症の症状とそれに対するケアの知識を学んだりします。
通常の介護士であれば対応に悩む場面も、学んできた知識を駆使して対策したり適切なケアを実践できたりするため、資格取得を目指す価値は十分にあるといえます。
介護士しながら認知症ケア専門士を目指すのは大変?
介護士として働きながら認知症ケア専門士を目指すのは、正直大変と感じる人もいます。
介護士は人手が足りないため日々激務をこなし、自宅に帰ると疲れ切ってしまう方がほとんどです。
そのため、勉強する気力が湧かず勉強が進まないという状況に陥りやすいのです。
しかし、認知症ケア専門士の資格は難易度が比較的高めであるためしっかり勉強しなければならず、途中で挫折してしまう方もいます。
難易度・合格率
2023年12月現在、認知症ケア学会が公表している合格状況は2021年の第17回までです。
17回の認定試験では受験者数が3,063人おり、そのうち合格したのは1,654人で合格率は53.7%でした。
2022年と2023年も認定試験は開催されていますが、2022年はまだ未公表となっており、2023年は合格発表待ちとなっていますので、わかり次第追記いたします。
第18回までの受験者数や合格者数、合格率は以下の表にまとめたのでご覧ください。
試験の開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第20回試験(2024年) | 申請受け入れ中 | 試験未実施 | 試験未実施 |
第19回試験(2023年) | 不明 | 発表待ち | 発表待ち |
第18回試験(2022年) | 3,666人 | 不明 | 不明 |
第17回試験(2021年) | 3,063人 | 1,645人 | 53.7% |
第16回試験(2020年) | 2,550人 | 1,442人 | 56.5% |
第15回試験(2019年) | 4,893人 | 2,607人 | 53.3% |
第14回試験(2018年) | 5,063人 | 2,769人 | 54.7% |
第13回試験(2017年) | 6,029人 | 3,266人 | 56.5% |
第12回試験(2016年) | 7,467人 | 3,983人 | 49.3% |
第11回試験(2015年) | 7,319人 | 4,375人 | 59.8% |
第10回試験(2014年) | 6,295人 | 3,365人 | 53.5% |
第9回試験 (2013年) | 7,533人 | 3,715人 | 49.3% |
第8回試験(2012年) | 9,070人 | 4,419人 | 48.7% |
第7回試験(2011年) | 8,046人 | 3,395人 | 42.2% |
第6回試験(2010年) | 9,282人 | 4,188人 | 45.1% |
第5回試験(2009年) | 11,214人 | 6,034人 | 53.8% |
第4回試験(2008年) | 8,498人 | 5,032人 | 59.1% |
第3回試験(2007年) | 6,848人 | 3,016人 | 44.0% |
第2回試験(2006年) | 5,313人 | 3,449人 | 64.9% |
第1回試験(2005年) | 5,121人 | 2,445人 | 49.4% |
上記のとおり、約半数しか合格していないため、実務経験を積んでいたとしても油断はできません。
それほど専門性が高く、しっかりと勉強しないと解けない問題が多いことを意味しています。
気を引き締めて試験対策を行いましょう。
仕事しながら勉強する方法
介護士の仕事をしながらでも認知症ケア専門士を目指して勉強をする方法を2つご紹介いたします。
- 問題集をひたすら解く
- オンラインの対策講座を受講する
問題集をひたすら解く
認知症ケア学会では過去問題集を販売していませんが、本屋や通販サイトなどで市販されています。
なるべくたくさんの過去問を解いて出題傾向を掴み、何度も出題されるものは必ず解けるようにしておきましょう。
オンラインの対策講座を受講する
認知症ケア学会では、認定試験の対策講座をオンラインで行なっています。
認定試験は認知症ケア学会が主催で出題内容も考えているため、認知症ケア学会の対策講座は大いに試験対策に役立つでしょう。
受講料は15,000円ですが、テキスト内容の中でも要点に絞った授業を受けられるうえに模擬試験も受けられるため、受けてみる価値はあります。
介護士が認知症ケア専門士を取得するメリット
介護士が認知症ケア専門士を取得するメリットは、以下の4つがあります。
- 認知症の利用者さんの心理や思考の理解が深まる
- 認知症の知識を深められる
- 適切なケアを提供しやすくなる
- 就ける職種の幅が広くなる
資格を取得しても、必ずしも認知症ケア専門士として働かなくてはならないわけではありません。
取得後も介護士として働き続けることで、認知症のプロフェッショナルを武器にした介護士として適切なサービスを提供できるのです。
介護士が認知症ケア専門士の資格を取得する方法
介護士が認知症ケア専門士の資格を取得する方法と流れを解説いたします。
受験資格
受験資格は、第一次試験と第二次試験で異なります。
介護士として現在働いている方は、認知症ケアに携わる業務を行い、また試験実施年の3月31日を含む過去10年間で3年以上の実務経験を積んでいることが条件です。
働く機関や施設は問いませんが、ボランティアは実務経験として数えられないため注意が必要です。
「最新の認定試験の第一次試験に合格している」または「過去に第一次認定試験に合格している」という条件に加え、以下の条件をクリアする必要があります。
- 各受験分野の合格期限(5年)が切れていないこと
- もしくは以下の条件をすべて満たした認知症ケア准専門士
- 認知症ケア准専門士の資格の有効期限(5年)が切れていないこと
- 最新認定試験の受験資格を満たしていること
- 過去の第一次合格者または条件を満たす認知症ケア准専門士は、受験申請前に「論述問題送付希望届【様式6】」などを提出していること
ほかにも、細かい条件があるため、以降で解説いたします。
職務・職場の条件
実務経験を積む職場や仕事内容は、認知症専門でなくても問題ありません。
所属する期間や施設、団体、職種は受験資格の実務経験の対象とはなりませんが、認知症のケアを行なっていることが条件です。
また、施設や団体は問わないとしていますが、ボランティアは実務経験に入らないため注意してください。
保有資格の条件
保有資格は受験資格の対象外であるため、社会福祉士や介護支援専門員などの資格がなくても受験を受けられます。
「社会福祉士や介護支援専門員などの資格を保有していると実務経験証明書は提出しなくてもいい」と勘違いをしてしまう方がいますが、提出しなければ受験資格を得られません。
再受験の方
再受験の方は、過去の試験で発行された結果通知の合否結果や各分野の合格有効期限をチェックしてから必要な分野の受験申請をしてください。
試験の範囲
出題範囲 | 合格の要件 | |
---|---|---|
第一次試験 | 認知症ケア標準テキスト ・認知症ケア専門士制度規則 ・施行細則 ・教育カリキュラム1〜5 | ・分野で70%以上の正答率を有する ・4分野すべての合格をもって第一次試験を合格とする |
第二次試験 | 論述 ・認知症ケアの事例に対する論述 ・論述試験の合格者を対象とする倫理研修 | 論述の評価により、下記の5つの要件を満たすと合格となる ・適切なアセスメントの視点を身につけている方 ・認知症を理解している方 ・介護計画を適切に立てられる方 ・制度や社会資源を理解している方 ・認知症を患う方の倫理的課題を理解している方 |
合格後は登録申請をする
合格であることがわかり次第、所定の書類を提出して登録申請を行う必要があります。
なお、申請料として15,000円かかります。
登録申請を忘れてしまうといつまでも資格を取得できないため、申請のし忘れがないように合格後も気持ちを引き締めましょう。
資格取得にかかる費用
資格を取得するのにかかる費用は、受験料・登録申請の手数料が必ずかかります。
受験料は、第一次試験の場合1分野につき3,000円で最大4分野の12,000円、第二次試験は8,000円、登録申請の手数料は15,000円ですので、最高額は35,000円です。
加えて、試験会場までの交通費、1冊10,000円前後のテキスト代、受験対策講座を受けた場合は15,000円の支払いも必要です。
認知症ケア専門士を取得する介護士は需要はますます高まると予測される
介護業界では、まだまだ認知症ケアを適切に行える人材が少ない上に、認知症を患う人数は増えていくと予測されています。
2023年12月時点では、介護福祉士などに比べると保有率の低い資格ですが、初任者研修や介護福祉士などのように介護士であれば取得するべき資格となっていくでしょう。
有効期限があるため更新に時間とお金を費やす必要があったり、まだ資格手当の対象となる事業所が少なかったりなどのデメリットもありますが、認知症ケアの仕事に役立てられること、重宝される人材になれるメリットもありますので取得を目指してみるのもいいのではないでしょうか?