特定疾患医療受給者証という言葉をご存知でしょうか?
病気になり、その原因や治療法がなく長期の療養を必要とする疾患のことを難病といいます。
難病を持った人は、病気で生活や私生活にも支障が生じて悩みや孤立感を抱える方も多いです。
しかし、適切な対応をとることで安定した生活を過ごされている方も多くなりました。
難病を抱える人が社会的支援を受けるために取得する必要なものが「特定疾患医療受給者証」です。
この記事では特定疾患医療受給者証を取得するための申請方法やメリットについて解説していきますので、興味のある方は参考にしてください。
難病とはどんなものなのか
難病というと、治すことが難しい病気、ベッドで寝たきりの方をイメージされる方が多いかもしれません。
2015年に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」では以下の要素があるものと記載されています。
- 発病の原因が未だ不明である
- 治療法が未だ確立されていない
- 希少な疾患である
- 長期にわたる治療が必要である
上記の4つが難病と指定される要素です。
主な病気での対象疾患例を挙げます。
- スモン
- 難治性の肝炎のうち劇症肝炎
- 重症急性すい炎
- プリオン病
- 重症多形滲出性紅斑
上記5つの病気が難病と指定されています。
難病法は国により、難病治療の研究を推進して難病を持つ人の医療負担を下げて社会参加できるように総合的な支援を進めることが定められています。
難病の人のために、障害者支援法は障害者としての福祉支援の提供も行われています。
以下で病気の症状について解説をしていきます。
スモンについて
スモンは、薬物による疾患なので進行性はありませんが、未だに症状に苦しむ方も多くおり、合併症などが危惧されている病気です。
原因は利用者さんが胃腸症状のため服用していた「キノホルム剤」とされています。
昭和45年にキノホルム剤が使用停止と定められると同時に新しい発症はなく、患者数は年々減少傾向です。
症状としては下痢や腹痛など腹部症状がみられ、重症例では両下肢完全麻痺や視力にも障害をきたします。
また、キノホルムが投与された3週間の間に両下肢に自覚的な痺れがあらわれ、歩行行動に不安が生じるケースもあります。
劇症肝炎について
初期症状は全身倦怠感、食欲不振、嘔吐、発熱などがあります。
一般の急性肝炎の場合だとこれらの症状は改善しますが、劇症肝炎では進行して急性脳症に至ることが多いです。
肝性脳症は軽い症状の場合は睡眠リズムが損なわれる程度ですが、進行すると自分のいる場所がわからなくなったり、簡単な計算も出来なくなったりします。
症状が悪化すると、失礼な言動を発するようなる、暴れるなど異常行動が見られるといった症状がみられるようになり、最も高度な場合は音や痛みにも反応できなくなります。
これらの症状は、緩やかに進むこともあれば急激に進行する場合もあるので注意が必要です。
原因はウイルスの感染や薬剤アレルギーなどがあるとされていますが、原因不明の症例も多く未だに解明しきれていないのが現状です。
重症急性すい炎について
急性すい炎とは、すい臓に急激な炎症が起こり強烈な腹痛を起こす病気です。
消化酵素がすい臓そのものや周辺の組織を溶かす「自己消化」が起きます。
重症性急性すい炎膵炎は10%近くの方が亡くなられる重い病気に分類されていることから、厚生労働省から難病指定されています。
主な症状は、激しい上腹部の腹痛や嘔吐、下痢、発熱です。
悪化すると細菌感染が全身に広がって臓器不全を起こすケースや、すい臓の壊死した部分が感染症を起こすケースがあり、ショック状態や意識障害、呼吸困難などを起こして命にかかわります。
主な発症原因は、アルコールや胆石といわれています。
男性の発生原因で多いのはアルコールで、女性は胆石が最も多いです。
プリオン病について
プリオン病とは「プリオン」と呼ばれるタンパク質が感染症の可能性のある異常な形態に変化し、脳内で増殖・沈着し様々な精神症状や運動失調、認知症状などをひき起こす病気です。
典型的な症状は認知機能が低下して数ヶ月の間に言葉が出なくなったり、寝たきりの状態になったりするなど認知症のような状態にまで進行します。
また、異常なプリオンが蓄積すると、ふらつきやバランス障害、パーキンソン症状などの症状も出現します。
アルツハイマー型認知症などの病気と判別がつきづらいので見極めには注意が必要です。
発症原因はタンパク質とされていますが、どのような形で発症するかが未だ解明されておらず、治療法も確立されていないのが現状です。
重症多形滲出性紅斑
重症多形滲出性紅斑とは口唇・眼・鼻・外陰部などの粘膜にただれが生じ、全身の皮膚に紅斑が発症する病気です。
他にも倦怠感や発熱などの症状も発症して症状が悪化していくとただれた部分から出血をきたすことがあります。
進行が早いため症状が悪化しやすく、時には上気道粘膜や消化管粘膜を侵して呼吸器症状や消化器症状にも異常を起こすことがあるので注意が必要です。
原因は解明されておらず、薬剤や感染症がきっかけになり皮膚や粘膜の病変が起こると推測されています。
治療としては副腎皮質のステロイド薬の全身投与が第一選択薬ですが、重症化した場合は免疫グロブリン製剤静注療法や血漿交換療法なども併用して行われます。
特定疾患医療受給証を受けるメリット
上記の5つの疾患を患っている人は「特定疾患医療受給者証」の認定基準を満たしています。
認定を受けた方の医療費は、公費で賄われます。
難病の治療は極めて困難であること、かつ医療費も困難であるため特定疾患治療研究事業を推進することにより、利用者さんの負担軽減を図ることが目的です。
そのため、医療費の自己負担がかからないことといったメリットがあります。
対象医療の範囲は、申込受付日から有効期限までの間に認定された疾患及びその疾患に付随して発現する疾病に対する医療費も給付の対象です。
特定疾患医療受給者証に関する注意事項
特定疾患医療受給者証に書類申請をする必要があります。
必要なものは下記の6つです。
- 特定疾患医療受給者証交付申請書兼同意書
- 臨床調査個人票(診断書)
- 世帯全員の住民票
- 保険証(原本)
- 保険者照会にかかる同意書
- その他所得の課税状況に関する書類
申請書は、提出した後に結果が出るまで1〜2ヶ月かかります。
有効期間の開始日は申請書を保健所に提出した日からになりますので、承認期間内の医療費については、立て替えて後日に還付請求することが可能です。
特定疾患医療受給者証には、受給者承認期間が記載されているので、承認満期を迎える3ヶ月前に交付を受けた保健所で申請の手続きをしなければいけません。
受給資格を失った場合は、管轄の保健所に受給者証を返還する必要があるので注意が必要です。
まとめ
難病は原因不明のため、治癒することが困難な上に通院、服薬、自己管理を徹底させる必要があります。
病気と上手く向き合いながら生きていくことは難しく大変なことですが、医療費などの経済的な問題は公費で賄われる支援に頼ることができます。
特定疾患受給者証を取得すると公費で医療費を補うことができるので、経済面でのメリットは大きいでしょう。