利用者さんがひどい忘れ物をしたり、普段と違う行動をした場合「認知症かも?」と不安になったりすることがあるかもしれません。
本当に認知症なのかを判断するには、放置せずに早めに認知症検査を受けて適切なケアをすることが重要です。
しかし、いざ検査を受けるとなると漠然とした不安を感じたり、試されていると思い緊張してしまったりする方もいらっしゃいます。
また、認知症と診断された場合、本人やご家族の多くは不安や焦りを感じながら過ごしていくことになるでしょう。
本記事では、認知症検査の内容や認知症患者さんとの向き合い方を解説します。
認知症検査の内容を知り、利用者さんにとってより適切なケアをしていきましょう。
そもそも認知症とは?
認知症とは、脳の病気や障害など何らかの原因により認知機能が低下し、日常生活がうまく行えなくなるような状態をいいます。
もの忘れは加齢により起きることもあるので、認知症によるものなのか判断がつきにくいですよね。
加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いは、ヒントがあれば思い出すことができるかどうかです。
加齢によるもの忘れは、ヒントがあれば思い出すことができます。
一方、認知症によるもの忘れは物事全体がすっぽりと抜け落ち、ヒントがあっても思い出すことができません。
認知症にはいくつか種類があります。
アルツハイマー型認知症は認知症のなかで最も多く、もの忘れから始まることが多いです。
次いで多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症で、アルツハイマー型認知症と合併している患者さんも多くみられます。
その他にも、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症といったものがあります。
認知症検査が必要になるのはどんな人?
認知症検査が必要になる人を想像すると、多くの人はご高齢者を想像するのではないでしょうか。
年齢を重ねるほど認知症になりやすくなるのは事実です。
厚生労働省によると、2025年には日本における65歳以上の認知症の人の割合が5人に1人になると予測されているほどです。
超高齢社会を迎えた日本では、認知症に向けた取り組みが今後ますます重要になってくるでしょう。
一方で、年齢の若い人でも脳血管障害やアルツハイマー型認知症のために認知症を発症することもあります。
認知症は誰でもなりうることから、認知症検査はあらゆる人に必要になる可能性があります。
物忘れが増えているなど気になることがあれば周囲に相談し、認知症検査を受けられるよう受診を検討しましょう。
認知症検査を受けるには何科を受診する?
認知症検査を受けるには何科を受診したらよいのでしょうか。
いざ認知症かもしれないと思っても、どこになにを相談すればよいかなど、対応の仕方がわからない人も多いのではないでしょうか。
認知症が疑われる場合は、まず、かかりつけの病院・医療機関に相談しましょう。
相談内容や病歴や現在の身体状況をもとに、適切な病院を見つけて紹介状を書いてもらえます。
紹介状を書いてもらうことで、これまでの診断結果や処方されている薬などの情報が伝わり、診察がスムーズになります。
かかりつけ医がいない場合は、認知症を専門とする脳神経内科・脳神経外科・精神科・心療内科に相談してみましょう。
もし心当たりのある医療機関がない場合は、地域包括支援センターに相談してみるとよいです。
センターでは、相談内容に応じて適切で通いやすい医療機関を紹介してくれます。
地域包括支援センターは、すべての市町村に設置されていますので、お住まいの市町村の高齢者福祉担当課などに問い合わせてみましょう。
認知症検査の種類と流れ
認知症なのかを調べるには、検査や問診を行います。
専門医の問診・脳画像検査・血液検査・心理検査・ご家族や介護者からの聞き取りなどを組み合わせて行うことが多いです。今回は、心理検査のなかでも代表的な6つの検査を解説します。
どの検査を行うかは医療機関や医師によって異なる
前提として、どの検査を行うかは医療機関や医師によって異なります。
一般的に多く用いられるのは、知的機能や認知機能を把握するための検査です。
いずれもなるべく利用者さんに負担がかからないように短時間で行われます。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は簡単な質問を行い、その答えでどのくらい認知機能が低下しているかを判断する検査です。
知的機能に障害が起きているかどうかやその程度を判定することができます。
質問の内容には、年齢や今日の日付を尋ねるもの、簡単な計算・記憶力を試すものなどがあります。
Mini Mental State Examination(MMSE)
Mini Mental State Examination(MMSE)はHDS-Rと同様に、簡単な質問で認知機能を評価するテストです。
HDS-Rよりも少し質問数が多く、図形を模写する視空間能力や文章を記載する言語能力についての項目があります。
時計描画検査(CDT)
時計描画検査(CDT)は数字と針のある時計の絵を描く検査です。
円の大きさや数字の配置などから、脳の側頭葉・前頭葉・頭頂葉の機能を評価します。
HDS-Rなどの知能検査とあわせて実施することで、総合的に認知機能障害の把握が可能になります。
Frantal Assessment Battery(FAB)
Frantal Assessment Battery(FAB)は脳の前頭葉の機能を中心に評価する検査です。
「言語の概念化」「言語の流暢性」「運動プログラミング」「干渉への感受性・抑制性の制御」「理解行動」を調べる6つの項目からなっています。
Alzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)
Alzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)は記憶能力を中心とする検査です。
「単語再生」「口語の言語能力」「言語の聴覚的理解」「自発話における喚語困難」「口頭命令に従う」「手指および物品呼称」「構成行為」「観念運動」「見当識」「単語再認」「テスト教示の再生能力」についての11の項目からなっています。
Clinical Dementia Rating(CDR)
Clinical Dementia Rating(CDR)は認知症の重症度を評価するための検査です。
「記憶」「見当識」「判断力と問題解決」「社会適応」「家庭環境や趣味・関心」「介護状況」の6つの項目について、5段階で評価します。
CDRは、重度の認知症により利用者さんの協力が得られない場合でも行える検査です。
利用者さんの協力が得られない場合は専門家が全般的に評価したり、ご家族や介護者からの聞き取りをもとに評価したります。
利用者さんが認知症と診断されたら
もし認知症と診断された場合、利用者さんやご家族の多くは不安や焦りを感じることでしょう。
認知症の症状に最初に気が付くのは、ほとんどの場合本人です。多くの方が進行していく病状を認識しており、大きな不安を感じています。
なかには介護施設に入居することになり「居場所がない」と感じてしまう方もいらっしゃいます。
では、私たちは認知症患者さんをどのような形で支援できるのでしょうか。
認知症と診断された方は、認知症になってしまったことで自信をなくしていたり、孤独を感じていたりしている場合が多いです。
そのため、それぞれの利用者さんに適したケアを行い、社会参加を促すことがとても重要です。
小さなことでも何かの役割を果たして達成感や充足感を得ることで、認知機能の維持や症状の軽減が目指せますので、介護士としてできることを見つけ、支援していきましょう。
認知症検査の内容を把握して、より適切なケアを行いましょう
認知症患者さんのケアや支援を行うには、認知症検査の基礎知識は必要不可欠です。
検査を行うことで、患者さんの病状を正確に把握し、適切なケアプランが立てられるようになるでしょう。
また、検査の結果をもとに、本人だけでなく医師やご家族とのコミュニケーションがスムーズに行えるようになります。
認知症検査の内容を把握して患者さんに合ったケアを行うことで、患者さんにその人らしい生活や人生を全うできます。