介護の資格はいくつかありますが「介護の仕事を長く続けていこう」と思うのであれば、介護福祉士を目指すとよいでしょう。
介護福祉士は介護の資格の中で唯一の国家資格であり、取得することでたくさんのメリットがあります。働きながら国家資格を目指すことは簡単ではありませんが、資格取得によるメリットも多く仕事にやりがいも生まれます。
いきなり介護福祉士の資格を目指すことは難易度が高いため、まずは初心者向けの資格取得から始めるとよいでしょう。毎日コツコツ勉強することで、介護福祉士という一つのゴールが見えてきます。
今回は介護士の資格について紹介し、働きながら介護福祉士を目指す方法についてくわしく解説します。学校選びのポイントも取り上げますので、ぜひ参考にしてください。
介護職の資格の種類
介護士として働く上でどのような資格を取ったらよいのでしょうか。仕事の幅が広がり、給与アップにもつながる資格を3つ紹介します。今の自分に合う資格はどれか確認してみてください。
①介護職員初任者研修(初心者におすすめ)
・資格の位置づけ
介護職の入門資格
・受験資格
なし
・学習内容
130時間の講義と演習
介護の理念や介護職の基礎知識、怪我などの対処方法など。
②実務者研修(初心者や介護経験がある方におすすめ)
・資格の位置づけ
介護職員初任者研修の上位資格であり介護福祉士の受験資格
・受験資格
なし
・学習内容
450時間の講義と演習(保有資格により時間短縮あり)
介護の専門知識と技術(介護福祉士国家試験の出題科目
医療的ケア「喀痰吸引」「経管栄養」の基礎知識など
介護職員初任者研修と実務者研修の資格を取得するには、研修を開講している学校で講義と演習を受講する必要があります。
講義は直接受けるだけでなく通信も選択できるので、働きながら受講するなら通信を選択するのが一般的です。なお、演習科目は通学受講が必須のため、通信だけでは取得できません。
通学日数は介護職員初任者研修は15〜16日、実務者研修は8日〜10日です。
③介護福祉士(受験資格がある方におすすめ)
・資格の位置づけ
国家資格。介護士の目標資格。
・受験資格
介護職3年の実務経験かつ実務者研修の修了
・試験内容
筆記試験と実技試験
(人間と社会・介護・こころとからだのしくみ・医療的ケアなど)
初任者研修や実務者研修とは異なり、介護福祉士には受験資格があります。
確実に合格を狙うのであれば、スクールの受験対策講座を受講してもいいでしょう。
介護福祉士を取得するメリット
記事の冒頭で「介護福祉士を取得すると多くのメリットがある」と説明しましたが、どのようなメリットがあるかを紹介します。
①給与がアップする
資格がない介護士と資格を保有している介護士の平均給与は以下の通りです。
- 資格なし 271,260円
- 介護職員初任者研修 300,510円
- 実務者研修 307,330円
- 介護福祉士 328,720円
平均給与を見ると「資格なし」と「介護福祉士」では月5万円、年間60万円以上の差があることが分かります。
②勉強したことが仕事で役立つ
たとえば病気や感染症などの知識を持っていれば、いざというときに適切な判断ができ素早い対応をとることができます。知識があることで自信がつき働きやすくなるでしょう。
③職場内の信頼が増す
介護福祉士の資格を取得するということは、介護のスペシャリストとして社会的に認められるということです。
発言や行動に説得力が生まれ、職場でも一目置かれるようになります。また将来管理職を任せてもらえる可能性が高くなります。
④転職で有利になる
介護福祉士は転職の際に有利です。資格保有者だと安心して仕事を任せられるとみなされます。
また、事業所の立場からすると介護福祉士は貴重な存在です。
介護の現場では介護職員等特定処遇改善加算という加算があり、勤続10年以上の介護福祉士の人数に介護報酬の加算率を算定して処遇改善額が決まります。つまり、介護福祉士が多いほど事業所に報酬が入る仕組みです。
採用側からすれば、介護福祉士の有資格者と無資格の人が応募してきたら、有資格者を採用したいと思うのは当然でしょう。
⑤次のキャリアアップの道が開ける
介護福祉士の資格を持っていれば、次のキャリアアップの道が開けるでしょう。
施設や事業所によっては、優先的に介護福祉士のキャリアアップを進めている職場があります。人生100年時代、高齢になっても働くことがあるかもしれません。
体力的に介護職を続けることが難しくなっても、現場ではなく役職のある立場に就けば長く仕事を続けることができます。
介護福祉士の資格取得をためらう理由とその解決策
介護士として働く人のうち、介護福祉士の資格を持っている人は4割弱です。介護の養成校を経て入職した人の中には、すでに介護福祉士の資格を持っている人もいます。
一方、転職して介護士になった人は無資格の状態で実務に入ります。仕事を覚え上司や同僚から信頼されるようになっても、介護福祉士を目指す人はあまり多くないのが現状です。
なぜ資格取得を考えないのか、その理由について考えてみます。
①今のままでいいから
受験をしたくない理由でもっとも多いのは「今のままでいいから」です。
年齢別でみると50代60代がもっとも多く、現状維持を望む結果となっています。年齢が上がるほど、新しいことにチャレンジすることが難しくなります。
資格は早いうちに取った方が、そのメリットを長い期間受けることができます。
②勉強する時間がないから
日々仕事や家事に追われていると、勉強時間を確保するなんて考えられないかもしれません。「働きながら国家資格を目指すなんて無理」と諦めている方も多いのではないでしょうか。
そこで1日の自分の行動を振り返ってみてください。何となく無駄に過ごしている時間はありませんか。ゲームをしたり、何となくテレビを見ていたり、だらだらと過ごしている時間が意外とあるものです。
③お金がかかるから
介護士の資格取得費用を調べると高額であることに驚かされます。
【介護士の資格取得費用の一般的な相場】
・介護職員初任者研修
スクール費用 約4万円~10万円
・実務者研修
スクール費用 約10万円~18万円(無資格者の場合)
※保有資格によって減額あり
・介護福祉士
受験費用 18,380円(令和5年1月実施)
スクール費用に幅があるのはサポート内容などに差があるためです。
実務者研修では、保有資格があると免除される講義があるため、スクール費用も減額されます。それでも高額であることに変わりありません。
この「お金がかかる」ことがネックになり、資格取得に前向きになれない人が多いのではないでしょうか。
しかし、費用がかかるからといって諦めないでください。
国や市区町村は介護福祉士を増やしたいと考えており、多くの事業所が介護福祉士を求めています。そのため、介護福祉士には色々な助成金が用意されているのです。
次の項目では、介護福祉士の資格取得に関わる助成金制度について紹介します。
介護福祉士の資格取得に関する助成金制度
介護福祉士を目指す際に受けられる助成金制度を紹介します。
介護福祉士修学資金等貸付制度(厚生労働省)
- 貸付金額:月額5万円以内、入学準備金20万円以内 、就職準備金20万円以内
- 国家試験受験対策費用:4万円以内/年度
介護福祉士・社会福祉士養成施設在学者向け修学資金貸付事業(社会福祉協議会)
※下記内容は東京都の場合です(貸付金額や詳細は都道府県により異なります)
- 貸付金額:月額5万円以内、入学準備金20万円以内 、就職準備金20万円以内
- 国家試験受験対策費用:4万円以内/年度
一般教育訓練給付金(ハローワーク)
- 受講費用の20%(上限10万円)まで助成
専門実践教育訓練給付金(ハローワーク)
- 受講費用の50%(上限金額は受講年数により異なる)まで助成
上記の制度を利用するには条件があるため、自分が該当するかよく確認しましょう。貸付制度は、資格取得後に介護福祉士として一定年介護業務に従事することで返済が免除されます。
また、学校に提携している介護施設がある場合は、資格取得後に就職することで受講料が免除になるケースもあります。
介護福祉士資格取得の学校の選び方
介護福祉士の資格取得を考えたとき「独学ではなく学校で勉強したい」と考える方がいるでしょう。
学校選びは以下の①〜③の順番で絞りこんでいくとスムーズに決められます。
①使用する助成金制度が対象としている学校を選ぶ
自分が利用する助成金制度を決めたら、その制度が対象としている学校を選ぶようにしましょう。
対象となる学校一覧はホームページなどで参照することができます。学校に直接問い合わせてもよいでしょう。
②自分に合うサポートがある学校を選ぶ
病気や急な仕事で講座を休むことがあります。休んだときに振替ができるか否かは事前に確認しておきましょう。
また自宅学習で分からないとき、メールや電話での質問体制が整っているかどうかも重要なポイントです。
③学校の立地、通いやすさで選ぶ
講義は通信でも受講できますが、演習科目は通学する必要があります。駅近の立地のいい学校は受講料が高い傾向があります。
通いやすさを優先するべきか受講料の安さをとるか、よく考えて学校を選びましょう。
色々な情報を入手してお得に介護福祉士になろう
今回は介護士の資格と、働きながら介護福祉士を目指す方法について紹介しました。
介護福祉士の資格取得にはお金がかかりますが、多くのお得な制度が用意されています。介護福祉士はスペシャリストの証明であり、スキルアップや給与アップに繋がるたくさんのメリットがあります。
色々な情報を調べて上手に活用すれば、働きながらでも介護福祉士の国家資格を取得することは可能です。賢い選択をして介護福祉士を目指し、長く介護の仕事を続けましょう。