「自分の職業の年収平均はどのくらい?」「所属する病院や会社の規模によって年収は変わるの?」など、年収の話は気になるところですよね。
今回、厚生労働省が令和4年に発表した「賃金構造基本統計調査」をもとに【医療・介護職】の平均年収をランキング形式でまとめました。
職場の規模ごとに分けた平均年収も表示しています。
医療職や介護職に興味がある方やこれから就職や転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
【医療・介護職】平均年収ランキング
(平均年収 単位:千円)
年収順位 | 職 種 | 全所属規模平均年収 | 所属規模1000人以上平均年収 | 所属規模100~999人平均年収 | 所属規模10~99人平均年収 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 医師 | 14,289 | 12,454 | 16,951 | 17,253 |
2 | 歯科医師 | 8,104 | 7,530 | 9,030 | 8,153 |
3 | 助産師 | 5,842 | 5,838 | 5,861 | 5,835 |
4 | 薬剤師 | 5,834 | 5,857 | 5,816 | 5,794 |
5 | 診療放射線技師 | 5,437 | 5,744 | 5,296 | 5,063 |
6 | 臨床検査技師 | 5,089 | 5,654 | 4,671 | 4,503 |
7 | 看護師 | 5,081 | 5,560 | 4,853 | 4,604 |
8 | 保健師 | 4,813 | 5,149 | 4,774 | 4,105 |
9 | 理学療法士作業療法士言語聴覚士視能訓練士 | 4,307 | 4,729 | 4,168 | 4,312 |
10 | 歯科技工士 | 4,299 | 4,457 | 4,116 | 4,321 |
11 | 准看護師 | 4,182 | 4,308 | 4,237 | 4,070 |
12 | 介護支援専門員(ケアマネージャー) | 4,058 | 4,126 | 4,197 | 3,877 |
13 | 歯科衛生士 | 3,825 | 4,467 | 4,059 | 3,750 |
14 | 介護職員(医療・福祉施設等) | 3,629 | 3,897 | 3,671 | 3,450 |
15 | 訪問介護従事者 | 3,532 | 3,952 | 3,652 | 3,328 |
上記のランキング表は、全所属規模の平均年収をもとに順位付けしています。
所属規模の大小によってランキングが入れ替わることもあります。
「平均年収ランキング」の概観
ランキング表全体をみると医師が突出して年収が高く、その後に歯科医、助産師、薬剤師などが続いています。
歯科医は医院の数が多く競争が厳しいイメージがありますが、年収ランキングでは医師に次ぐ2位です。
しかし歯科医になるまでの学費や時間を考えると「年収が高い」といえるかどうかは微妙なところだという声もあがっています。
また介護職の年収が低いこと多くの方が気になっているでしょう。
夜勤があり責任が重い介護職はもっとランキングが上がってもいいはずだという声もあがっています。
今後の年収の変化について注意深く見ていく必要があります。
全体的には予想どおりの結果といえますが、細かく分析すると色々なことを読み取ることができます。
ではランキング表からどのようなことがわかるのか、くわしく解説します。
職場の規模によって年収は変わる?
一般的に大企業で働いた方がもらえる報酬は高くなります。
医療や介護の世界でも同様の傾向がみられます。
15職種のうち11職種が「所属規模1000人以上」の平均年収がもっとも高いという結果になっています。
同じ資格を持ち、同じ職種なのに報酬が違うとしたら「年収が高いところで働きたい」と考える人も多いでしょう。
しかし医療や介護の場合、単純に規模が大きいから待遇がよいわけではなく、責任の重さ、仕事の大変さ、求められるスキルに比例して年収が高くなることが多いです。
大規模な職場の方が年収が高い職種とは
1000人以上の大規模な職場で働いた方が圧倒的に年収が高い職種トップ3は臨床検査技師、保健師、看護師です。
所属規模10~99人の平均年収との差は以下の通りです。
【所属規模による平均年収の差】
- 臨床検査技師 115万円
- 保健師 105万円
- 看護師 96万円
いずれも100万円前後という大きな差が生じています。
ではこの数字の差にどんな理由があるのか、分析して考えます。
①【臨床検査技師】所属規模による年収差が大きい理由
臨床検査技師が働く大きな職場としては、大学病院、総合病院、検査センターなどがあげられます。
ほとんどの大病院は夜間外来があり、臨床検査技師も夜勤シフトに入るため、その分年収が高くなります。
また超音波検査(エコー)など保険点数が高い検査が多いことも、給与が高く設定される理由です。
検査センターも基本的には夜勤があるので年収は高くなります。
一方、小規模な病院やクリニックでは夜勤がないところが多く、年収は抑えられています。
②【保健師】所属規模による年収差が大きい理由
保健師の職種で最も高年収なのは、企業で働く産業保健師です。
大企業だと大人数の健康管理を行うため、残業が多い傾向があります。
しかし残業代はしっかりと支払われるので、残業代を稼ぎたい人にはおすすめです。
また総合病院や大学病院で働く保健師の場合、看護業務を兼務することが多く夜勤もこなすので、年収は高くなります。
一方、行政や学校の保健師は夜勤がなく高年収を望むのは難しい反面、やりがいや働きやすさに魅力を感じる人も多いです。
③【看護師】所属規模による年収差が大きい理由
看護師も同様で大病院は夜勤があり年収は高くなります。
また難しい症例の患者さんも多く、看護師としての高いスキルが求められるため、給与水準は高い傾向にあります。
一方、規模が小さい病院やクリニックでは、夜勤がなく患者さんも比較的軽症なので、心理的負担が少ない分、年収は低くなります。
所属規模による年収の差が小さい職種とは
所属規模による平均年収の差がほとんどない職種は、助産師、薬剤師です。
もちろん働く職場によって年収が大きく変わることはありますが、平均してみると所属規模による年収差は1桁という結果になっています。
【所属規模による平均年収の差】
- 助産師 3万円
- 薬剤師 6万円
①【助産師】所属規模による年収差が小さい理由
少子化が進み、産科自体をなくす病院もあるなか、助産師の需要は減少するどころかますます高まっています。
ニーズの高さを裏付けるように助産師の数は、2008年から2018年までの10年で1.6倍にも増えています。
その背景には、以下のような社会情勢の変化があります。
- 産科医の減少
- 高齢出産の増加
- 新たな需要の増加
そして助産師の仕事内容は医療機関の規模によって大きく変わることはありません。
職場規模の大小に関係なく助産師の需要が高いことが、年収に差がない理由と考えられます。
②【薬剤師】所属規模による年収差が小さい理由
薬剤師の勤務先を見てみると薬局勤務が約6割、病院勤務は約2割と薬局と病院だけで全体の約8割を占めています。
製薬企業に勤める研究職やMRの薬剤師が高年収であることは知られていますが、その割合は小さく約1割となっています。
薬局薬剤師の場合、所属規模による年収の差はあまりなく、専門資格の保有や管理薬剤師として働くことによって年収は上がります。
また、病院勤務については、需給の関係から大病院よりも診療所で働く方が年収が高い傾向があります。
年収は一面的な要素としてとらえよう
医療職・介護職の年収は所属規模によって違いがあるものの、仕事の大変さや需要と供給のバランスによって変化することが多いです。
今は高年収の仕事でも、需要に対し働く人が多くなれば、年収は必然的に下がっていくでしょう。
また仕事のやりがいや理想とする働き方は年収では計れません。
年収だけを見て就職を決めてしまうと「こんなはずではなかった」と後で後悔することになりかねません。
職種や職場選びにおいては、自分のやりたいことは何か、ほしいスキルが身につくか、など多面的に考え、年収は一面的な要素としてとらえた方がストレスなく働けるでしょう。