年齢を重ねるにつれ認知機能は低下し「物忘れの症状」が増えます。
「最近忘れっぽいけど、これって認知症?」と認知症を心配してしまう場合もあるでしょう。
認知症は高齢者に多く見られる病気であり、認知機能の低下や日常生活動作の障害などの症状を引き起こします。
「物忘れの症状」が認知症に伴うものかを判断するには、検査や認知症テストが必要です。
ここでは、医療機関で実施される認知症テストや自宅でできる認知症テストについて解説します。
認知症テストとは何か?
認知症テストとは、認知症の症状を評価する検査です。
テストにはいくつかの種類がありますが、「言語」「記憶」「計算」「空間認識」「注意力」から簡単な質問や課題を実施し、認知機能の状態を評価するのが一般的です。
医師や看護師などの専門職によって医療機関でおこなわれますが、自宅でできる認知症テストも存在し、自己判断の目安として利用される場合もあります。
認知症テストの種類について
認知症テストにはいくつかの種類があります。
代表的な認知症テストはMMSE(Mini-Mental State Examination)、改訂版「長谷川式簡易知能評価スケール」などです。
各テストでは質問や課題の種類、スコアの解釈方法などが違うため日本では改訂版「長谷川式簡易知能評価スケール」が広く使用されています。
改訂版「長谷川式簡易知能評価スケール」
長谷川式スケールは、医師である長谷川氏らによって開発された認知症テストであり、1991年に改定され現在のスケールになりました。
MMSEに代わるものとして日本で広く使用されており、多くの医療機関で採用されています。
改定長谷川式スケールは、医療機関での受診時に医師や看護師などが実施することが一般的ですが、自宅での認知症チェックとしても利用できます。
改訂版「長谷川式簡易知能評価スケール」のテスト内容
テスト方法は、以下の質問にしたがって口頭で内容を問いかけ、認知症の疑いがある方に答えてもらう方法で実施されます。
必要な時間は6〜10分程度です。
① | お歳はいくつですか? | 正解で1点※2年までの誤差は正解 | /1点 |
② | 今日は何年何月何日ですか? 何曜日ですか? | 年月日、曜日が正解でそれぞれ1点ずつ | /4点 |
③ | 私たちがいまいるところはどこですか? | 自発的にでれば 2 点5秒おいて家ですか?病院ですか?施設ですか?のなかから正しい選択をすれば1点 | /2点 |
④ | これから言う3つの単語を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。 | 1つの単語につき各1点※以下の系列のいずれか1つで、 採用した系列に○印をつけておく1: a)桜 b)猫 c)電車2: a)梅 b)犬 c)自動車 | /3点 |
⑤ | 100から7を順番に引いてください。(100-7は?、それからまた 7 を引くと? と質問する) | 100-7=93が正解で1点93-7=86が正解で1点※最初の答えが不正解の場合は打ち切る | /2点 |
⑥ | 私がこれから言う数字を逆から言ってください。(6-8-2、3-5-2-9 を逆に言ってもらう) | 2-8-6正解で1点9-2-5-3正解で1点※3 桁逆唱に失敗したら、打ち切る | /2点 |
⑦ | 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。(④の設問で言った3つの言葉を答えてもらう) | 自発的に回答があれば各 2点もし回答がない場合以下のヒントを与え正解であれば各1点a)植物 b)動物 c)乗り物 | /6点 |
⑧ | これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。(時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なものをみせる) | 正解であれば各1点 | /5点 |
⑨ | 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。 | 0~5個=0 点, 6個=1 点, 7個=2 点, 8個=3 点, 9個=4 点, 10個=5 点※途中で詰まり、約10 秒間待っても出ない場合にはそこで打ち切る | /5点 |
改訂版「長谷川式簡易知能評価スケール」は、9項目計30点満点で評価されます。
総合得点を算出し、スコアが20点以下だと認知症の可能性が高いとされています。
しかし、この点数だけで診断はできません。
このテスト方法は教育歴にも左右され、またテスト当日の体調や難聴により質問が聞きづらく、正しい正解が選べない場合もあります。
テストの結果だけではなく、脳画像検査などの身体的検査の結果もあわせて認知症と診断されるので、必ず専門医の診察を受けましょう。
自宅でできる認知症テストについて
改訂版「長谷川式簡易知能評価スケール」は本人にテストを受けてもらう必要があります。
本人が拒否する場合は認知機能の評価が難しいでしょう。
その場合は、自宅でできるテストとしてオンライン上で受けられるテストを活用しましょう。
家族や身近な方が代わりにテスト項目をチェックできますので、自宅でテストをおこなってみても良いでしょう。
また、自分の認知機能の簡易的なチェックツールとして活用するのもおすすめです。
定期的にテストを受けることで認知症をいち早く発見できます。
ただし、自宅でのテスト結果は参考程度で医学的な診断ではありません。
テスト結果に心配のある場合は医療機関や相談機関に相談しましょう。
認知症テストを受ける前に知っておくべきこと
認知症の代表的な症状に「物忘れ」があげられますが「物忘れ」は年齢を重ねることによる自然な現象でもあります。
認知症テストを受ける前に「加齢にともなう物忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いについて知っておきましょう。
以下で「加齢にともなう物忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いについて表でまとめました。
加齢による物忘れ | 認知症による物忘れ | |
体験したこと | 体験の一部を忘れる(朝ごはんのメニューを忘れる) | 体験のすべてを忘れる(朝ごはんを食べたこと自体忘れる) |
物忘れの自覚 | 自覚がある | 自覚がない |
探し物に対して | 自分で見つけようとする | 誰かが盗んだなどと他人のせいにする |
「加齢に伴う物忘れ」は部分的ですが「認知症にともなう物忘れ」は体験の全てを忘れます。
例えば「加齢に伴う物忘れ」は食事のメニューを忘れたという自覚がありますが「認知症にともなう物忘れ」は食事をしたこと自体を忘れます。
体験の全てを忘れるので「食事をしていない」「食事を食べさせてもらえない」などと発言する場合があります。
本人が物忘れの自覚がなく、物忘れ以外にも日常生活に支障をきたしている場合は認知症の可能性があります。
認知症は、早期発見・早期治療が重要です。
これらの症状が全てではありませんが、認知症に気づくためのサインとして覚えておくと良いでしょう。
認知症を疑ったら、認知症テストを受けてみましょう
認知症を疑った場合は、今回紹介したような自宅でできる認知症テストを簡易の認知症チェックとして受けてみましょう。
そして、認知症テストの結果や症状が気になる場合は、早めに医療機関や地域包括支援センターなどの相談機関に相談することが大切です。
認知症は早期の診断・治療によって認知症の進行を遅らせることができますので、今回紹介したような認知症テストを定期的に受けることもおすすめです。